有名な、『漁夫の利』、『猿まね』、等は私も見たことがありましたし、それらをもって、ビゴーは政治風刺画家であったと思っていました。
しかし、この本でも紹介されているように、ビゴーは政治風刺だけでなく、17年間の日本での生活を通して多くの庶民の生活を描いた作品を残しているのです。それらは温かみを持って描かれたものもあれば、辛辣な諷刺のものもありますが、著者はそれらを当時の日本を伝える非常に貴重な資料であるとして、100点の作品を紹介しています。
外国人であったからこそ描き得た日本の姿、自分たちでは気付かない「おかしな」日本人!の行動。この本を通して作者が語りたいのは、決して過ぎ去った明治日本の懐古ではなく、現代の日本にも多分にこうした要素が残っているということではないかと思います。世界が「近く」なっている現代において、日本人とは何か、ということを考える重要なきっかけとなる本ではないでしょうか。