「クリスマスの夜空に舞う天使たちを心の目で見る」祖母が孫娘に伝えた忘れ難いお話。
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「ニルスのふしぎな旅」が有名なスウェーデン人初のノーベル文学賞受賞女性作家ラーゲルレーヴの幼い頃の思い出を絵本にした荘厳で幻想的な忘れ難い物語です。本書は著者がデビューする時に「キリスト伝説集」に入れる物語のひとつとして、子どもの頃大好きだったおばあちゃんから聞いたお話をその当時四十年前の記憶を掘り起こして書き綴った物で、今回2003年に挿絵画家ヴィークランドが絵をつけて絵本として出版されました。
私が5歳だった時、とても悲しいことが起きました。おばあちゃんが亡くなったのです。おばあちゃんからクリスマスの夜に聞いたキリスト誕生のお話のことは、あれから四十年たった今でもよくおぼえています。むかし、ある暗い夜に男の人が火をもらいに外に出ましたが、みんな眠っていた為に先へと進み、やがて羊飼いのいる場所に辿り着きました。それから男の回りでふしぎな出来事がつぎつぎと起こります。羊飼いはわけを突き止めようと男の人のあとをつけました。そこには彼が思いもしなかった奇跡が待っていたのでした。
挿絵画家ヴィークランドの絵は淡く朧気で真に幻想的な雰囲気を讃えています。たくさんの天使たちの姿はちょっぴり怖いですが、やはり何処かありがたい神々しさが感じられます。おばあさんが孫むすめに伝えた教え、「神さまのすばらしさを見ることが出来るのはランプや月の光があるからではないということ、大切なのはそういう目を持つこと」ということばが深く胸に沁みて来ます。そしてこの絵本を読んだ私も何時か本当にクリスマスの夜空に舞う天使たちを心の目で見ることが出来たらいいなと思いました。本書は古い世代から新しい世代に向けて大切な教えをわかり易く伝えることを可能にする永遠に読み継いで行って欲しい素晴らしい絵本だと思います。
クリスマスの夜の温かいお話
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スウェーデンの女流作家セルマ・ラーゲルレーヴが実際におばあさんから聞いた話です。
おばあさんは幼いラーゲルレーヴにいろいろなお話をしていました。でも、おばあさんが亡くなってしまい、おばあさんが話してくれたお話も忘れかけてしまいました。ところが、一つだけはっきりとおぼえているお話があったのです。それは、キリスト誕生のお話でした。キリスト誕生のお話といえば、イエス・キリストが馬小屋で生まれた話ですが、このお話は違います。
赤ん坊を生んだ妻をあたためるために、夫である人は火を分けて欲しいと家を訪ねて行きますが、火は手に入りません。すると、年老いた羊飼いの男がいました。火を分けてもらおうと近づくと、羊飼いのそばにいた犬が襲いかかってきました。でも彼は無傷でした。
彼は、火の近くまで行こうとしましたが羊たちがいて通れません。でも、羊たちの背中を通って渡ることができました。
年老いた羊飼いは火を分けたくなくて、彼めがけて杖を投げましたが杖は当たりませんでした。羊飼いは火ならすきなだけ持っていくがいいと言いましたが、彼が火を持って行けそうもないと見て喜んでいました。ところが、彼は素手で火をつかんだのです。その上、火傷もしませんでした。
羊飼いは不思議に思い彼についていくと洞穴に母親と赤ん坊がいました。羊飼いがかわいそうだと思い親切にしてやると、そこは天使でいっぱいでした。羊飼いは天使を見ることが出来たことを神に感謝します。
柔らかいタッチの挿絵がお話をぐんと引き立たせてくれる本当によい絵本です。