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キャラクターとは何か (ちくま新書)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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ユニークなキャラクター論 ★★★★☆
小田切氏は力作『戦争はいかに「マンガ」を変えるか アメリカンコミックスの変貌』(NTT 出版)を書かれた人である。キャラクターと来たので軟派な路線に転向と思いきゃ、おー、やっぱり硬派な切り口。かつてないユニークな切り口で攻めて来た。
小田切氏の問題意識は、『金色のガッシュ!!』の原作者と小学館(編集者)との間にあったトラブルからはじまっている。この事件は既に有名なのでない様には触れないが、氏が違和感を感じたのは小学館サイドの対応。
この事件の解釈について、一般的に、「サラリーマン的な編集者が増えた事によるマンガ制作現場の崩壊」といった見方がなされている事に氏は疑義を感じる。それが小学館サイドの対応で、コミックはもちろんだが、MDを含めると「数百億のビジネス」をふいにする危険を招きながら社内的にはその担当者がまったく譴責されない不思議さの原因を小田切氏は追及する。
その原因を氏は以下の様に語っている。

「日本では文芸批評における小林秀雄の伝統から、批評言説においては作家論、作品論といったコンテンツ分析系ニーズが高く、マンガに関しては手塚治虫の存在により作品そのものを『作家の作品』として属人的に評価する風潮がさらに強い。マンガのアニメ化など多メディア展開や商品化は『マンガ』そのものに付随する現象として扱われ、その相互関係やシステムの分析はほとんど関心を持たれていない」

実は同様の事を中野晴行氏の『マンガ産業論』を読んだ時に感じた。マンガ産業、特にマンガを制作するレベルではそこから波及するものを市場とは捉えていない。もし、そこまで意識して市場をカウントしたなら、日本のポップカルチャーの多くがマンガをルーツにしている事が分かるというに実証になるのにも関わらず・・・・
ということで、以降キャラクターの歴史から本書は展開されて行くのであるが、今までのキャラクター論の中では一番社会的な見地を持っており考えさせられる所が多い。見るべき所が随所にあるので是非一読して欲しい。
おしい、遅すぎた!!! ★★★★☆
東浩紀の『動ポモ』以降、ゼロ年代(笑)のアニメ・マンガ論、キャラクター論の著作を数えれば枚挙の暇がないはずだが、ここに来て「キャラクターとは何か」というどストレートなタイトル。大胆といういうのか、勇気があるといえばいいだろうか。本書冒頭で著者はマンガ・アニメの批評には主に「文化論」と「産業論」があったのだという。おっ、じゃあ著者は独自路線かというと、「文化としてのキャラクタービジネス」論というのだからずっこける。よ、要するに折衷するということね。

それはさておき本書の構成をざっと説明しておくと、第一章では戦後日本のキャラクターマーチャンダイジングをおさらい。アニメ・マンガとはいわば「おもちゃの広告」であり、コンテンツとして独立したものでないということが明示される。続く二章ではクールJapanに象徴される「国策としてのアニメ」について論じ、「国営マンガ喫茶」と揶揄された国立メディア芸術センターが、単なる無駄遣い以上に、国際的動勢の文脈でとりあげるべきことであるのを示唆。

しかし、読んでいてここからこの本の構成がよくわかんなくなってくるのだけれど、なぜか第三章にきてようやくタイトル通り、キャラクターとは何かを古代まで遡って振り返る。ギリシャまでさかのぼんのなら、むしろ初っぱなにやっておいてほしかった。四章では日米の著作権の感覚的差異、出版流通的な差異まで話が及ぶ。

本書の着想は98年にはあったというが、それから12年かかったのは遅すぎたか。ビジネスという側面を強調する著者のキャラクター論は、確かに東や伊藤剛などそのほかの論者とは一線を引く部分もあるが、それも今となっては少々インパクトに欠けることは否めない。
それからタイトルもよくないと思う。せっかくの力作なのに、これはないだろうと。ただ、ボク自身でこの本に真にあったタイトルを考えては見たけれど、国内の流通について論じていれば、急に飛び出した「メディア芸術」という妙ちきりんなカテゴライズや、日米の著作権についての感覚的差異までも手を付けているため、まぁ回り回ってこの「キャラクターとは何か」に落ち着いてしまうのかもしれないとも、思う。