とはよく言うけれど、彼のこの小説もまさにそのとおり。
社会に対する苛立ち、大人になることの恐れと憧れ。
無垢なものと汚れたもの、そしてどちらでもない自分。
彼が社会に対してのメッセージをもつ小説を後に書くことを思うと、マキューアンを知るには絶好のテキストになると思う。
そして、何よりこの短編集は面白い。
内容もすべて違うテーマ、違う切り口。(異常と言われてしまうような)心理描写のうまいこと。彼のセンセーショナルなデビュー作も、それからしばらくして、現在を生きる私たちにはある意味おなじみの風景を切り取ったものであるってことも含めて。