方程式・行列式特論たる格調高い"古典"
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最初に複素数の導入から始まり、多項式の性質が詳しく解説されています。 実係数の代数方程式の実数解を計算するSturmの定理の説明も丁寧です。方程式の解についての証明は、とかくガロアの理論・証明に意識が行きがちですが、ガロアよりも前にアーベルが成し遂げていた事を改めて認識します。この領域は非常に数学的思考を養う良い問題だと本書を読んで感じました。後半、著者はまず行列式についての解説を終えてから、行列の解説に入ってゆきます。私たちが学生だった頃は最初に行列に"触れて"から行列式の計算・各法則に展開していったものでした。先に行列式の理論・計算から入ってゆく本書の方針に違和感はなく、これはむしろ、LeibnitzやCramerらによる計算方法から説明していくという代数学的見地からみた意義深い事だと考えさせられました。
芳醇な味わい
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数学書にも芳醇な味わいがあるものだと感銘しました。最初は代数学の入門書と思っていたが
「解析概論」を読んだ後でもなかなか読み応えのある内容です。とくにSturm問題とそれへの行列の応用のところは面白い。現代的な代数学もいいけれどこのように格調高い本をじっくりと読めるのもしみじみして幸福です。
代数の古典的名著を読もう
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著者がかって東京大学で講義した内容をまとめて1948年に初版を出版した古典的な代数学の著作です。しかし全く古くは感じられなく複素数の解説から始まって多項式の性質が丁寧に解説されています。
実係数の代数方程式の実数解を計算するSturmの定理の説明も丁寧であり、学校で教えられていないおもしろい数学を知ることができます。
三次、四次方程式の解の公式を説明した後、五次以上の代数方程式の代数的な解の公式がないことの証明を述べています。ガロア理論によらないで、1826年にAbelが証明した方法を知ることは興味深いことです。後半に入り行列式の解説に入ります。ここでも天下り式に行列式の説明をしないで、LeibnitzやCramerが扱った方法から説明しているので行列式を考える意義が良くわかります。続いて行列式から行列を登場させていく進め方は、さすがに著者ならではと納得しました。抽象的な代数学を学ぶのと並行してこの著作を読むと現代にいたる代数学の経緯を知る上で大変参考になり良い本です。問題も適宜入っておりそれを解きながらじっくり読むことを薦めます。