作品に入り込ませる吸引力
★★☆☆☆
ニューベリー賞を受賞した、ロイス・ローリの「ザ・ギバー」が大好きな作品だったので、久々にローリーの作品が読めるととても楽しみにしていた。夜になると夢を紡ぎにあらわれる若いドリームギバーと熟練のドリームギバー、さらに夢を与えてもらう側の8歳の男の子など、魅力的なキャラクターがそろっているにもかかわらず、その魅力が読んでいて最後まで伝わってこない。おそらく訳の問題なのではないだろうか。それぞれのドリームギバーの言葉表現が深まってこず、ときおりどのキャラクターが話をしているのか混乱したり、8歳の男の子がつらい過去を抱えているとはいえ、発する言葉がときおり乱暴すぎて、この子の過去を思んばかるよりも先に、不快感を与える。設定が魅力的なのに、読んでいて最後までこの世界に深くはいってゆけなかった。ギバーのときのように、自然と引き込まれる吸引力を求めると期待はずれに終わるかも。