秋のホテル
★★★★☆
読み始めたときにはこんなに心に残る本になるとは思わなかった。
半分くらい読んだところで飽きて他の本に移ってしまったくらい。
でもまたなんとなく読み始めたら、どんどん面白くなって
最後にはとてもいい本だったとしみじみと思う本になった。
読み終えた直後には彼女の判断はバカだって思ったけど、すぐに思い直した。
きっと自分も同じことをする。
美しい風景描写
★★★★★
第1章の冒頭から惹き込まれる風景描写が素晴らしい。
「窓から見えるのは、どこまでも遠くつづいている、灰色の世界だけだった。・・」
舞台はジュネーヴ湖畔にあるとあるホテルだが、以前スイスに行ったことのある読者であれば
おおよその場所は想像がつくと思う。登場人物の心理描写もさることながら筆者のレマン湖近辺の風景描写はあたかもそこを自分が旅をしているような気持になる。
何回でも繰り返し読みたくなる作品。
ブッカー賞受賞の傑作
★★★★★
ブルックナーの作品は、日本人には少々取りつきにくいところがあるかもしれない。この「秋のホテル」もヨーロッパの有閑女性達についての知識がないと理解に苦しむ部分があるのは事実だ。しかし、ブルックナーの繊細で仔細な人間観察を通じて、ヒロインの内面の変化と成長が丹念に描かれたこの作品は、静謐さの中にも人間のエゴイズムや孤独をしっかりと見据えていて素晴らしい。イギリス文学の伝統を受け継ぎながら、普遍的な人間性を描いた傑作といえる。こういった作品が生まれるのも成熟した文化を持つヨーロッパならではだろう。
踏み出せない一歩
★★★★★
ブルックナーのブッカー賞受賞作品が「秋のホテル」だ。知的で思慮深い女性は人生の観察者でしかないのだろうか。
愛にこがれ、愛を求めつつも、踏み出せない孤独な女の心理をブルックナーは見事に描ききっている。ブルックナーは、何度も読み返すごとにその味わいが増すという素晴らしい小説を多数発表しているが、まずは「秋のホテル」から入ると彼女の世界がつかみやすいだろう。