本書の魅力は、カントの人となりを精神分析の手法を使って書いているところであろう。規則正しい生活を送ったとされるカントの心理背景、彼の倫理観の形成される要因となった精神的理由など、普通とは違った視点から浮かび上がる人間カントに、倫理観あふれる敬虔なカントにも人間的な側面が多分に備わっていたことを知り、なんだか親近感がわいてくる。
入門書と言うよりも、伝記として読めばかなり楽しめるだろう。