読者は、ゾーヤとニコライ2世の皇女たちとの心温まる友情・家族愛で温室の中のようなほのぼのとした世界に浸っている時、突然ロシア革命によって、一夜にして家族が引き裂かれてしまうという悲しい疑似体験をさせられる事になります。皇女たちと遊ぶゾーヤの気持ちになって読むのもいいでしょうし、ゾーヤと一緒にアメリカへ渡る時などは、祖母エフゲーニアの気持ちを我が身に置き換えて、感傷に耽ることでしょう。
もしあなたが、初めてスティール作品を読むのがこの物語だとしたら、極めて運がいいと言わざるを得ません。なぜなら回り道などせずに、スティールの世界の本質を見ることができるからです。