チャイコフスキーの第4番は,もはや誰をも寄せ付けない大演奏である。ロンドンで毎年数週間に渡り開かれるコンサート「プロムス」の曲目からの録音であり,会場はロイヤル・アルバート・ホール。その広さゆえ一般的に音を拾いにくく,技術者泣かせの会場である。
が,本盤は,まったく,微塵も,その気配がない。はじめの金管の咆哮から,音はまっすぐ聴く側の耳へと飛んでいく。そのヒートは最後までまったく冷めることなく,締めは弦を上回るため通常は抑えられる打楽器までが,作曲者の指示通りfffで打ち鳴らす。
その余韻,いや打ち鳴らしている途中から既に観客の称揚が,口笛から叫び声から,始まってしまう。本来ならまったくマナーに欠けた行為が,それさえ演奏の一部であるかのように思わせ,許してしまうほどである。「プロムス」自体が一種のお祭りであり,お祭り騒ぎと考えれば,神経質になることもない。
ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲も,上記の陰に隠れてしまう感があるが,ロストロポーヴィチが名演を奏で,本盤を買った以上は必聴である。……それにしても,すごい。