「“二号さん”を東京ではお妾さん、関西ではおてかけさんと呼びます。目をかけるか、手をかけるかだけの違いですが」
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「エッ、らくだはンが死にはった??
……考えてみると人間、
案じんでもよろしいなア、
死に道のあるモンでんな」
●『らくだ』より
「エーあンさんがた何人さんお泊まりで??」
「わしらか、始終三人じゃ」
「そらまッ!! 仰山でございますなッ
四十三人さんお泊まりやてッ」
●『宿屋仇』より
「どうらんの幸助?だれや??
わし知らんなア」
「おい、この辺に住んでてあのヒト知らなんだら
大坂に住んでてお城知らんのと一緒やで」
「お城に住んでるヒトか??」
●『どうらんの幸助』より
「タバコも無うなった、
束(たば)が無うて、粉(こ)ばっかりや……」
●『算段の平兵衛』より
「おい船頭ッ
客が、だれか頭ァ間違うて行たヤツがおるで??」
●『百人坊主』より
「ああ、栴檀の森や、オマエから入れッ」
「まぁあンさん、どうぞ先に入ンなはれ。
わいまた、あとからゆっくりと
入れてもらうさかい」
「風呂へ入るように言いよる……」
●『ふたなり』より
「ピストル突きつけられて、
その尼はんもビックリしたやろな??」
「なかなか、尼はんも胆がすわってるさかい、
そんなことでは驚かん。
胆も胆も、赤タン青タンがすわったある。
ピストル向けてもよろしい、てなもんや」
●『阿弥陀池』より
「平生は若旦那とか、
ボンボンとかすぽぽんとか言うてるけれど、
生命あってのモノダネや、逃げよ逃げよ」
●『土橋萬歳』より
『次の御用日』『佐々木裁き』
計10席
笑い・落語史・民俗
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第6巻には、「らくだ」「宿屋仇」「どうらんの幸助」「算段の平兵衛」「次の御用日」「佐々木裁き」「百人坊主」「ふたなり」「阿弥陀池」「土橋萬歳」が収録されている。
米朝の落語を何度も聞いたことのある者にとっては、本の文字を追っていると、米朝の話す声が聞こえてきそうで、間をあける部分も、自然に間をあけて読んでしまいそうです。
「らくだ」は、米朝の実演を見た時のことをはっきりと憶えていて、強引なやくざ者の熊五郎と、気の弱い紙屑屋の立場が途中で入れ替わってゆく様が面白かった。
「阿弥陀池」の中で「新聞を読め」と言っているのを聞くと、この噺が作られた明治や大正時代の匂いがして面白い。
このシリーズの全巻に言えることですが、各噺の前に「口上」として、その噺が米朝に伝承された経緯や、過去の演者のやり方が紹介されており、落語の歴史を学ぶことが出来る。
また、話中に使用される古い言葉や風習の説明もあるので、日本語や民俗についても知ることが出来る。米朝は学者肌の人ですね。