残念ながら、整理やはしょり方が悪かったり、忠実に文字に写した口跡が却ってうるさかったりして、読んで楽しめないことがままある。
実演を見聞きした読者にとってはうれしくても、そうでない者は、やっぱし落語はつまんねえや、と誤解しかねない。
高信太郎は、書店に並ぶ落語の「速記本やら解説本やら事典」は、「やたらむずかしく、なにか大学の講義を受けているような専門書とか、あらすじをのせた」ようなもので、「落語をすでに知っている人が研究したり調べたりするのに役立つ」だけと考え、生の落語に読者をさそう「落語入門の本」として、本書と『マンガ落語大全笑う門には福きたる』をかいた。
与太郎、大家さん、八つあん、熊さん、かみさん、田舎侍、お殿様、留公、ご隠居、若旦那、金坊、甚兵衛さん等々、お馴染みの面子が、高信(こうしん)のキャラでお馴染みの落語の世界をのたくってる。
言い古されたことだが、健康な批判的精神と合理性にゲラゲラ笑ってしまう。
「マンガ傑作落語大全」の文庫化だから、二度買いしないように。