恋のからまない同性同士の淡い三角関係を、水面の波紋のように二つ三つ重ねて描き出している。登場人物の組み合わせは同じ作者の『フュージョン』とよく似ているが、特別な事件などが焦点化されない分だけ、三人の主人公それぞれの視点からみたじんわりと微妙な人間関係の展開を楽しめる。

３人の女の子達の受験に恋に友情に、思春期特有の難しくもどかしく揺れる心がリアルに描かれていました。
女の子が３人集まれば、みんなが平等に仲が良い、とはいかない。
恋のように友情も一方通行に流れていく。
そして中学３年生、多感な年頃な上に受験が差し迫った不安定な時期。
些細な心のすれ違いや、失恋、新しい世界の確立や自立など、３人の目線から見た、葛藤の中で成長していく少女達が、なんかいいなって思いました。
なかなか清々しい終わり方で、読後感も良かったです♪。

「切ない」という感情が好きだ。
単に「悲しい」だけではなく、苦さや辛さ、ときにすっぱさや甘さが、微妙な匙加減で混ざる。
ちょっとでもブレンドを間違えれば、うそ臭くなってしまうその感情を、作者は実に見事に描き出してくれる。

杏、美香、樹里……、それぞれ性格の異なる中学３年生を主人公に、真由子という個性的な同級生がからむ、日常の物語。
大きな事件が起こるわけではないが、思春期の女の子たちの心の内は、毎日がドラマチックだ。
読者は、彼女たちの繊細な心のひだに共感しつつ、その成長していく姿に、思わず声援を送りたくなるだろう。

昨年５月に「天下無敵のお嬢様１けやき御殿のメリーさん」でデビューした作者の、三冊目。
小学校高学年向けの「天下無敵……」シリーズも元気で楽しい物語だが、ヤングアダルト向けの本作で、いよいよ濱野京子の本領発揮というところ。

現役青春真っ只中のあなたも、その昔を懐かしく思うあなたも、胸キュンの切なさをたっぷり味わえる、おすすめの一冊です。

メディアで取り上げられるのは、事件を起こした中学生や
陰惨ないじめなど・・・暗いニュースばかりで、昨今の中学校って
どこもかしこも殺伐としてるのかな、って錯覚しそうになる。
そんな中、この、普通の中学生のことを普通に書いた小説に出会えて
本当によかった。

ごく普通の公立の共学の中学に通う杏、樹里、美香は、
落ち着いた雰囲気だったりそれぞれスポーツに秀でていたりルックスがクラスで
いいほうだったり、それなりの個性はあるものの、さほど派手な感じでは
ない。どちらかというと教室の隅で楽しそうにおしゃべりしてそうな、
どのクラスにも居そうな女の子たちだ。

外から見ると、3人は普通に仲良しに見えるけれど、
樹里は、かわいい美香とは親しくしたいけど杏は少し苦手。
美香は、杏をいちばんの親友、樹里も大事だけどちょっと
口うるさいところもあるしな、という感じで見ている。
杏は「おなじ高校に行きたい！」と甘えてくる美香が
少ししんどいなーと思うことも。

そんな中学3年も半ばを過ぎたころ・・・
杏は、クラスで誰よりも大人っぽくて少し浮いている
真由子という女の子と、図書館の本の貸し借りをきっかけに
急接近することに。３人のバランスと、中学時代のゴールは
いったいどうなっていくのだろうか。

派手な事件も起こらず、運命的な恋愛話や劇的なクライマックスなど
特に無いんだけど、3人の視点で語られている素直な気持ちの独白や
教室や寄り道先のファストフードの店で交わされる会話が
生き生きしていてかわいらしかった。

水沢めぐみとか、ちょっと昔の王道の学園漫画好きな人には
とくにお勧めです。