参考になる事が実にたくさんあった。文献に残る植物は「万葉集」「古事記」が最初ではあるが、だれがどういう頻度で扱っているかによって、文書以前の渡来の時期を推測したり、考古学的成果を動員して、縄文人の利用の仕方を明かにしたりしている。ツバキやホオノキ、リンドウなどの古代での使われ方等、参考になった。
面白いのはなぜ彼岸花が墓地や土手、畦に多くて、人里に限って咲いているのかという考察であった。彼岸花は有史以前、しかしわりと最近になって渡ってきた渡来種である。かって日本では死者は土葬にされた。野犬やねずみ避けに彼岸花の茎に毒を持つ特性が利用されたのだろうという推測である。土手や畦に咲いているのは、ねずみ等による穴の水漏れ防止に利用されたのだろう、ということだ。今年も彼岸花は彼岸の入り前後に計ったように一斉に人里を赤く染めていった。約2000年の時を隔てて、「人の想い」をみたような気がした。