この本がヒントになって少しでもいじめが減ってくれればいいなと願います。
★★★★☆
アメリカ児童文学界の人気作家サッカーが1993年に発表した子ども達に勇気を与えてくれる良書です。9歳の男の子マーヴィン・レッドポストはある日学校でいじめっ子から「鼻をほじってた」とからかわれ、「ほじってない」と何度言っても相手にされず段々と噂が広まって親友やクラスの仲間たち、果ては先生にまで誤解されてしまいます。やがて、ひとりぼっちで孤立しどうしていいかわからなくなったマーヴィンは教室で机につっぷして泣くほどに追い詰められて行きます。わずか9歳でぼくの人生は終わってしまうのかと真剣に悩むマーヴィンは初めてで最大のピンチを乗り切れるのか?このままだと陰湿ないじめをテーマにした暗く悲しい結末になりそうな物語を作者はぐっと踏ん張って持ち前の明るさで救ってくれます。ただならぬ様子に気づいた両親から問い詰められたマーヴィンは、父さんと母さん、2つ年上の兄のジェイコブ、四才の妹リンジーの家族全員にいきさつを全部打ち明けます。名案が浮かばないまま途方に暮れかけた時に、リンジーが何気なくもらしたひと言がマーヴィンに大きなヒントを与えてくれます。子どもの頃は人の痛みがわからずに集団で面白がっていじめてしまうのはよくある話で、内心で悪い行いだと気づいて可哀そうな子の味方になろうとしてもそれがきっかけで仲間はずれにされてしまうのを恐れて結局やめられなくなってしまいます。みんなきっと心の中ではいじめをやめたいと思っていたはずで、マーヴィンがみんなにいじめの仕返しするのでなくさり気なく仲直りが出来るようなきっかけを作ったやり方が素晴らしいと思います。昨今本当にいじめは深刻な問題で、悲しい出来事を描いて教訓にするのもひとつの方法ですが、本書のようにいじめに負けずに勇気を出して明るい気持ちではね返す物語も貴重で、この本がヒントになって少しでもいじめが減ってくれればいいなと願います。