あくまで入門用として
★★★☆☆
プログレを知るためにまず押さえておくべきもの、基本となるべきものというコンセプトからして、1999年出版の「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック」をさらに補強したもののように思いました。(両者とも監修は大鷹俊一氏)。
主要バンドからジェネシスがオミットされて、代わりにカンが入れられているのには疑問を感じますが(カンは好きなバンドですけど、どちらかというとニューウェイヴの文脈で取りあげるべきバンドだと思うので)、プログレを知りたいという人が参考するにあたり、とても頼もしい書であると思います。
一つ注意点なのは、マグマの「デ・フトゥーラ」の作曲者をB・パガノッティとしてありますが、本当はヤニック・トップです。
あと気になるのは、「ヤング・パーソンズ〜」から一貫して変わらない日本のプログレ蔑視指向。シンフォ系(おそらくノヴェラとかを指してるかと)をプログレとして認めたくないのでしょうが、少なくともそれらバンドの質自体は高いのだからそこまで毛嫌いせんでも・・・それに(シンフォじゃないが)美狂乱はさすがに入れとくべきでしょう。なぜそこで裸のラリーズなのか・・・
とまあ、後半感情的になりましたが、良書であることは間違いありません。「プログレってどんなの?」と思った方は買って損はないです。
ちょっと中途半端かな?
★★★☆☆
プログレッシブ・ロックの中から主だった作品を紹介したディスクガイド。
自分はプログレに関しては初心者に毛が生えた程度の人間(他にも色々聴いている)で、興味があって読んで見ましたがちょっと微妙かな、と思いました。
・英国中心すぎる
確かにプログレは英国が最も盛んだったと思いますが、それ以外の国が「英国以外」みたいな扱いにされているのはちょっと残念です。プログレの良いところの一つにさまざまな国の音楽に触れる機会が増える事があげられると思います。なのでもう少し取り上げる国を増やすとともに、良いバンドがたくさんいる伊、仏、独くらいはもう少し充実させて欲しかったです。日本国内のも最後にほんのちょっとまとめられているだけ、というのはあまりに寂しすぎます。
・コレクターズアイテム的な盤が大きく扱われすぎ
「ベーシック」と言いつつも、アフィニティー、パトゥ、インディアン・サマー等、どちらかと言うとマニアがコレクションして楽しむようなタイプの作品の方にスポットが当てられがちなのはちょっと疑問。入門者もターゲットにしているならマニアの目線だけで作品を紹介するよりも、一般の目線も考慮して作品を取り扱うべきでしょう。
・カンの扱い方が・・・
カンが俗に言うプログレ4大バンド(クリムゾン・イエス・ELP・ピンクフロイド)と同等の扱いを受けていますが、カンをでっかく取り上げるならマグマやアレアあたりの代表的な個性派も同じようにでっかく取り上げて欲しかったと思います。全体のバランスを考えると、ここは順当にジェネシスで良かったかと。
総じて全体の情報量が少なめで初心者向けっぽい割にはややマニア目線になりがちな作品の扱い方にバランスの悪さを感じます。カンはマニア目線の裏返しでしょう。小さめのサイズで持ち運びやすいのは良いですが、ちょっとしたリファレンスに使うにはもう少し情報量が欲しかったです。しかしCDが売れない昨今にこういうガイド本が出たこと自体、プログレ界全体としては喜ばしい事なんじゃないかと思います。全くの初心者なら全然損は無いので、この一冊でプログレの世界に足を踏み入れるのも悪くはないでしょう。
ちなみに自分はカンが大好きで、カンのこの扱いは個人的には嬉しいですし、実際カンが後世に与えた影響力の大きさは絶大だと思います。なので個人的にはこの扱いを全力で支持します。が、しかし、これは残念ながらマニアのおじ様方の顰蹙を買うこと必死です。なぜならカンの先進性には後のニューウェーブやポストパンクの要素が多分に含まれており、それらは特にシンフォ・プログレを好むマニアなおじ様方がたいがい敵視しているものだからです。ファンサイトのレビューではシンフォニックではない、クラシカルではない、と言うだけで批判の対象になっているケースもしばしば見受けられます。なので、そうしたマニアのおじ様方の空気を(たぶんあえて)読まずにカン持ち上げた著者の勇気にはこっそりと心の中で拍手を送っておきます。
「プログレ初心者」 〜 「中級者」あたりにオススメ!
★★★★☆
「ARTIST PICKUP」では、
KING CRIMSON、PINK FLOYD、YES、Emerson, Lake & Palmer、CANを紹介。(バイオグラフィ、主要アルバム解説、ディスコグラフィー)
ディスコグラフィーは、
編集アルバム、発掘音源アルバム、メンバーソロ etcも含みますが、1バンド・1ページなので、完全ではありません。
(普通は、CANではなく、GENESISだと思うので、「☆-1」させてもらいました。)
「UK 100 Albums(最後30タイトルはカンタベリー系)」
「EU/US 60 Albums(独、伊、仏、米、加 etc)」では、
「1アーティストにつき1枚 or 2枚」のアルバムを掲載してます。
掲載アーティストの例は、
「UK」 CURVED AIR, GENESIS, GENTLE GIANT, JETHRO TULL, THE MOODY BLUES, Mike Oldfield, VAN DER GRAAF GENERATOR etc、
「UK (カンタベリー系)」 GONG, HENRY COW, SOFT MACHINE etc
「EU/US」 AMON DUUL, FAUST, KRAFTWERK, TANGERINE DREAM, AREA, BANCO, PFM, ATOLL, MAGMA, FOCUS etc
「EU/US」は、北欧は1枚だけなので、北欧目当ての人には「×」です。
(もちろん、南米、オセアニアなどは、入っていません)
注意点は、
上記「商品の説明」にあるとおり、「ベーシックなアルバム・ガイド」という点です。(あくまで、「ベーシック」です!)
盤の選定も、「そのアーティストの代表作(ベスト3に入るような盤)」が選定されていると思います。
まず、「プログレ初心者」「プログレ『も』聴きますという人」
「プログレ関係のガイド本を1冊、欲しい人(後は自分でネット検索・試聴)」に、オススメです。
また、「プログレ中級の人」にも、Good!だと思います。
一方、プログレ上級者やマニアには、オススメしません。
「1冊というボリューム」「掲載枚数」からしても、「得るものが少ないのでは?」と、推測できますよね?