知の巨人による「近代」への警鐘
★★★★★
本書は、東京外語大学名誉教授であり、
イタリア思想を専門とする著者が、
17世紀イタリアの哲学者ヴィーコについて解説する著作です
幅広い分野を包括する議論を展開し、
クローチェ、ハーバマス、バーリン、清水幾太郎など
錚々たる思想家によって取り上げられながらも
日本では、十分に知られているとは言えないヴィーコ。
著者はヴィーゴの自然科学者、キリスト教者、バロック人等の側面に注目し
実験・実証を重視しつつも、理性の限界を強調したヴィーコの思想を紹介します。
同時代を生き、近代思想の基礎を築いたデカルトに対する厳しい批判
「人類の共通感覚」を通じた「最初の人間たち」の理解
彼の著作の表紙に登場する「叡智の目」など、
興味深い記述が多くありました。
なかでも個人的に特に興味深いのは
キリスト教者であり、ピエール・ベールを批判したヴィーゴが
神学的な傾向を薄め、「共通感覚」に依拠していく経過と
それに対する著者の評価です。
「自然の学と自然の同一視」や「学識の誤り」など近代が内包する危うさを、
その創成期において指摘したヴィーコの鋭い問題意識と
今日における重要性を簡潔に知ることができる本書
思想史に関心がある方はもちろん
一人でも多くの方にオススメしたい著作です。