インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

江戸・東京地形学散歩 災害史と防災の視点から 増補改訂版 (フィールド・スタディ文庫2)

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 之潮
Amazon.co.jpで確認
地質/地理構造を理解した災害対策の重要性がわかる良本 ★★★★☆
 前半の東京の地盤の歴史と後半の災害史/防災から成りますが、後半は前半に準拠しているので説得力があります。東京の地盤をこれだけわかりやすく解説している本は初めて見ました。王子(石神井川)や等々力渓谷など気になっていた箇所の分析も秀逸。地図/地理/都市工学のいずれかが好きな方にお奨めです。

小生の印象に残った点は以下です。
・12万年前の末吉海進で末吉面ができた。
・本郷台は、海面が高かったときに荒川の堆積物でできた。約8万年前に離水。
・氷河期に海面が下がると急傾斜の段丘面ができる。約1.8万年前の最終氷河期極相期後の縄文海進(有楽町海進:7千年前)でそれが埋まった地点は、急に河川敷が拡がったように見える。例:飯田橋の江戸川大曲(i.e.後楽園の地盤は劣悪)
・最終氷河期の古東京川は、かなり東(亀戸/大島/小松川)を流れていた。沖積層が厚く地盤劣悪。
・本所以西や浅草/日本橋/銀座の下には縄文海進時の本郷台の波食台が隠れており、地盤はそれほど悪くない。
・本郷台から北北東に伸びる旧日光街道(金杉)は海流でできた砂州。浅草も。その間(千束/旧吉原)は残された池(鎌倉時代はまだ海)で地盤が悪い。その北側を封鎖した日本堤(旧吉原北)の右岸と隅田堤の左岸で、隅田川の氾濫を漏斗のように吸収した。
・浅草の待乳山(真土山)は人工。
・草加と足立の県境の毛長川は、弥生/古墳時代には、大宮台地の西と南を巡る利根川/荒川の本流だった。蛇行の周期から大河川だったことがわかる。こういう河川を名残川といい、九品仏川や善福寺川もそう。
・王子の石神井川争奪は、飛鳥山西の旧石神井川(藍染川)の逆行距離が長いことから、人工ではなく自然に起きたものと推察される。
・干潮海面(荒川工事基準面(Arakawa Peil:A.P.))より低い、東京メトロ東西線南砂町駅の出入口は外から一旦登って防水扉を潜ってから入る。洪水時は防水扉を閉め、出入口天井から脱出する。
・江東デルタ地帯は外郭堤防で、A.P.5.1mまで耐えられるようにしている。過去の高潮は1917年のA.P.4.21m。東京湾平均海面(Tokyo Peil:T.P.)でいうとT.P.4.0mが計画高潮位。
・野川が多摩川と合流する東急二子多摩川園駅周辺は、堤防を切って道路が作られているだけでなく、河川敷に多数の家が建てられていて危険。(狛江以上の惨事になる可能性がある)
・中野から阿佐ヶ谷にかけて火災に弱い住宅地が続く。

 下町は、高潮や利根川の堤防決壊にひとたまりもないことがよくわかりました。地震と台風と大潮(満月/新月)が重なるとかなり危険なのではと思います。(温暖化で海面が再び上がってますし)
 武蔵浦和の鹿手袋にある幅の広い川跡は、毛長川のものなのではないでしょうか。縄文海進の際の沿岸流で澪ができ、陸化後も暫く、大宮台地の南端を流れたのではないかと推測します。
 地質/地理構造を理解した災害対策の重要性が改めてわかる良本です。