次世代に引き継がなければならない『Evergreen Songs』
★★★★★
「初恋」のときめきに共感し、「秋桜(コスモス)」で家族のありがたさを噛みしめ、千春の「恋」に好きとやるせなさの混ざった感情を託す。
「精霊流し」「いい日旅立ち」「悲しい色やね」で見知らぬ街に思いをはせ、「めまい」を口ずさんでストレスと虚しさだらけの心のバランスを保つ日々。
「シクラメンのかほり」「白い冬」「愛はかげろう」「かもめはかもめ」で時の流れと共に恋はいつか終わるものと知る。
友達と呑んで気分良く酔うと「遠くで汽笛を聞きながら」「ワインレッドの心」をエアギターしてしまう。
未来が見えなくても堅実な日々を重ねることが無意味ではない、独りではないんだと「道化師のソネット」が教えてくれた。
etc.etc.
'70年代〜'80年代前半をこれらの歌と生きてきた人にとっては、イントロだけで鳥肌が立ってしまうのではないか。
まったく捨て曲のない、しかもヒットした歌手のオリジナルバージョンでの収録だ。
事実僕にとっても大人に憧れたりリアルタイムに聴き始めた頃で、ギターを習ってたクラシックからフォークやエレキに持ち替えたり、コードだけを覚えてピアノに向かい始めたほど血肉になったものだ。
DSD方式に詳しくさだまさしなどソニー所属以外のアーチストにも信頼の厚い、鈴江真智子氏による立体感あるマスタリングの音も素晴らしい。(一部リマスター効果の少ない曲もあります)
確かに懐かしい歌だが、特定世代の「懐メロ」だけで終わらせてしまうにはあまりに惜しい。
打ち込み多用の、“喜怒哀楽”の“喜と楽”しかない「お友達メール」みたいに子供じみた浅はかな歌ばかりが流れる有線や民放FMにこれらの歌を知らしめたい。
(許されるものなら、どうでもいいテーマをFAX&メールで募ってばかりのワイド番組にコーナーを作って一日一曲フルバージョンで流したい!)
冷めた目でケータイやパソコンに病みつきに向かってる精神のコドモ達に
「かつてはこんなに感情豊かでまっすぐな日本語の歌があったんだ」と教えてあげたい。
この歌たちが次世代に伝わって流行シーンにも反映されれば、きっと日本ももっと思いやりを持てる国になれるのではないか。