永遠の名作、そしてたぶん、永遠の名訳
★★★★★
サン=テグジュペリの童話として名高い本作は、大人と子どものための童話、と一応銘打ってはあるけれど、おそらく、大人と子ども、どちらかがもっている世界と、どちらにもかけている世界と、その双方をふくみもつ作品ではないだろうか。もしかすると、サン=テグジュペリは、そのどちらの世界をも、もっていたのかもしれないけれども。
自分の星をはなれ、地球にやってきた王子さまが、われわれの見たこともない小世界の住人、その特色ある、たっぷり奇妙で不思議な人や動物たちに出会う。それでもかれらは、それぞれに一生懸命で、だからほんとうは、われわれよりもまともで、自分の住む世界をそれなりに愛している。王子さまの目を通じ、われわれ大人というものが、いつしか自分の滑稽さを忘れてしまった存在であることを、本書はいつも思い出させてくれる。そして、これまでのありふれた世界に、ほんとうは厖大な闇と光耀がひそんでいたことにも、気づかせてくれる。しかし、その闇と光耀は、本来、わたしたちのこころの反映でもあるはずである。澄んだ目とこころを失った大人たちには、かつての驚嘆する目とこころを。夢をもつ子どもたちには、それを育むこころを。
王子さまがキツネと遭遇する場面が、とくに印象ふかく、わたしはフランスにも、フランス語にもまったく暗いながらも、日本語としての訳文のすばらしさを痛感させられる。やや箴言めいてはいるけれど、本書に登場するキツネの言葉は、いいつくせない叡智と味わいにみちている。自分も、キツネのような仕方で、物事や世界を愛することができたなら、と思わずにはいられない、そんな人生を教えられる一冊。
読後、世界が変わって見えた。
★★★★★
星の王子さまって、有名だし、名前と絵は知っていたけど、しょせんは「子供向けの本」でしょ、と思って読んでなかった。でも、とある縁でこの本を読んだ。すると、この本の底知れぬ深さ、面白さを発見して、驚き、感動した。本を読んでうけた、こんな感動は、生まれて初めてかもしれない。本を読んだあと、世界がもっと広く、もっと愛らしく思えてきた。
この本を読まれる方は、ぜひ稲垣直樹著「サン・テグジュペリ (Century Books―人と思想)」も読んでいただきたい。これを読めば、もっと深く、この本を楽しむことができると思うから。
抑揚あふれる日本語
★★★★★
翻訳本とは、原作がかもし出す奥の深さを半減させてしまうことが多いが、この翻訳本は、原作に限りなく忠実に訳されていると感じた。「星の王子様」は、子供だけをターゲットにした単純な童話ではなく、実はとてつもなく奥が深いことを、この本は十分に教えてくれる。翻訳者の見事な腕には感服するばかりである。
フランス文化を理解している人向け
★★★★★
フランス文化に深く精通している一人である研究者の訳本。原作の作者自身が、どちらかといえば子供だけではなく大人の読者も視野に入れて書いた本なので、訳も少し難解で、大人向けになるのは必然である。フランス文化についてしっかりとした理解のある読者なら、この訳本がどの訳本よりも原作に忠実に訳してあることがお分かりになるだろう。
子どもにはむずかしい
★★☆☆☆
この訳者は、読者として子どもを対象にはしていないようです。子どもが読むにはむずかしすぎます。大人が読んでもけっして読みやすくはありません。原作の詩的な雰囲気が伝わってこないのです。日本語による文学作品として成立していない印象を受けました。