「覚悟」が必要な三国志
★★★★☆
男色ものだから覚悟が必要なのではない。
その病みきった世界観に、果たしてどれだけの人がついてこれるだろうか。
読み終わったあと、まともな精神状態を保てるだろうか。
1巻は、まだソフトだから、いい。
6巻からは、もう地獄(笑)。
結論からいえば、この作中で、幸せになれた人はいない。
勝ち組となった面々も、後の歴史を考えれば破滅の道を歩んでいったに過ぎない。
読み進めるたびに、鬱々とした気分になる。
だが、先が読みたくて堪らない、中毒のような状態にもなる。
読み進めたところで、病んだ世界が待っているだけなのに…。
男色に抵抗がなく、それも人間の愛の形、と柔軟に受け止められる人なら、ハマる。
男色をホモと毛嫌いする人は、読むなかれ。そんな低次元のオツムで理解できる物ではない。
それに、男色シーンは美しく描かれていて、男女の官能とさほど違いはない。孔明も女っぽいし。
ハマったら最後。己が精神を犠牲にする覚悟をすべし。
更に、三国史上の色々な人物を、心から嫌いになるであろう未来を覚悟すべし。
ホント、なんの覚悟もなく読んだ私は、手酷くやられましたよ。
恐ろしく陰湿な孔明
★★★★★
タイトルはこの作品に対しての最大限の誉め言葉です。 5巻までしか読破してませんが、主人公である孔明の鬼謀に舌を巻くこと数知れず。 目から鱗が落ちるような思いでこの本を読んでおります。 本書の孔明の性格は悪くいって破綻してますが、実に人間らしいとも思います。 誰しもが抱える心の闇を鮮明に映し出している作品です。 心理描写が秀逸で読ませる力がこの本にはあります。 あまりの面白さにページをめくる手が止まらず、つい夜更かししてしまう有り様です。 お恥ずかしながら私は三国志というものに興味はあったものの、小難しい漢字と格闘するのが苦痛で今まで手を出しかねていました。 本書から三国志に入っていくと確かに他の著名な三国志本にすら手が出なくなるかもしれませんが、本書から三国志に入っていくのもありじゃないかと思います。 かくいう私は吉川英治氏の三国志を本書と並行して読んでおります。 同性愛描写などにあまり抵抗がないのであれば、是非一度手にしてみてください。 ですが食わず嫌いをしてこの作品に触れないのはあまりに勿体ないことだと思いますので、できるなら同性愛が苦手な方にも手に取っていただきたいです。 同性愛描写といっても、あからさますぎない表現で話の隙間に挿入されているだけですので、読み飛ばせば問題ないかと。 それではお目汚し失礼致しました。
わかりやすいです
★★★★☆
登場人物が多く 内容もわかりづらい三国志ですが、歴史的な流れや史実に基づくシーンもわかりやすく書かれていて とても読みやすいです。
それはひとえに、この小説が恋愛小説としての側面を持っているからかもしれません。
私はまだ一巻しか読んでいませんが、この小説の諸葛孔明は完全に女性として描かれているような気がします。そして同じ女性として、周瑜のような男性に身も世もなく征服されたいという気持ちはわからないでもない という感じでしょうか。
ちょっとやり過ぎって気もしますが。
漢字や熟語も覚えるし、作者の博識ぶりに感心する作品だと思います。
一読の価値あり
★★★★★
他の方々も書いてありますが、男同士の絡みにアレルギーがある人はさておき、それはそれと流せる人なら読んでいただきたい。私も小学生のころから三国志に填まり、ありとあらゆるバージョン、著者、訳、関連書類等を読み漁りました。この著者は相当いろんな文献も読み、資料も研究していると思います。その知識なしにこの深みは出ないと思います。私は初版は5巻まで、この復刊は全巻読みましたが、心理描写や資料を基にした官僚、風俗等のソフト&ハード面の両方が整った良い作品だと思います。
もっとも人間味あふれる三国志
★★★★★
武将同士の一騎打ちや軍師たちの知略戦が華であったこれまでの三国志小説と違い、人間の弱さや恋情、権力闘争など、どろどろとした内面をテーマにした最も人間味あふれる三国志です。
主役はかの諸葛亮ですが、性格がこれまでの孔明像とはかけ離れています。確かに神算鬼謀の悪魔の頭脳の持ち主なのですが、性質は陰険であり誠実さは欠片もなく、しかも内部で男の人格と女の人格が同居しており、そのせいか女に対してはどこまでも残酷になれる人間です。幼少時の傷から、このようなエキセントリックな性格になったようなのですが、男としては広大な中華を足下にひれ伏させたいと望む権力の権化であり、女としては誰かに深く愛されたいとの渇望を抱いています。しかし、いざその渇望が叶えられたとなると、今度は身動きがとれなくなっている自分に気づき、制御不可能な恋情の呪縛から逃れるために、自らを棘の道へと追い込んでいきます。
この作品は「孔明死す。享年54」などの史実は動かないのですが、そこに至る経緯や原因が大きく異なり、全く別の物語になっています。また演義では、北伐で唐突に出てきた孔明の腹心斐緒や空城の計の童子、ほとんど出てこない諸葛均や孔明の側室たちにもきちんと人格が与えられ、孔明も冷酷でありながら、哀しさを漂わせている人間で、ぜひ読んでみてほしい作品です。