思想の概要、周辺の時代背景、伝記(老子は存在そのものが不確かだが)を説明したうえで、上記のようなテクニカルタームの解釈に入るので解りやすい。道教イコール老子・荘子の思想ではなく、神仙思想や享楽主義は後に付加されたなど、正確な理解の助けとなるのもこの本の大きな特長。後世への影響も詳しい。禅宗は老荘的だけど、相違点もあると。文学や書画も、儒教より老荘思想によって育てられたのか。
老荘の哲学は、理想を超えた大きな何かという感じです(荘子は理想への努力さえ否定しているから)。そうしたものがぼんやりとでも見えれば、人生違ってくるのかな…と。
「神を失った現代人にとっては、神の無い宗教を待望するしかない。それに応えるものの一つとして、老荘の哲学がある」という著者の結語にうなずかされます。