霊魂のコスモロジー
★★★★☆
平田篤胤における霊魂の思想を読み解いた作品。この世界における自己の存在理由を神学的に意味づけようとした篤胤が、近世社会を席巻した仏教の世界観や思想構造に影響をうけつつもそれを徹底的に否定した理論を提示していく様を、著者は『新鬼神論』や『霊の真柱』など篤胤のテクストに沈潜しつつ明らかにしていく。宣長に私淑しつつ、だがこの師のややネガティブな死後観(「黄泉」へ)とは全く異なる全人間=全霊魂=全死者の存在の絶対肯定的なコスモロジーを篤胤がなぜ構築するに至ったのか、その思想的事情を、本書はじっくりと教えてくれるだろう。全体的に篤胤の世界観に寄り添い過ぎた感があり、そのため現代思想的なアクチュアリティは読み出し難かったが、思想史の学術書としてはそここそ参考になった。