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夜になるまえに

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 国書刊行会
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抜書き ★★★☆☆
「キューバのブルジョワは、黒人の出であるバティスタを嫌い、イエズス会の学校で学びスペイン人農場主の息子であるカストロを支持した」(P.72)

「決起した人々の大半はバティスタ独裁があれほど速く崩壊するとは思っていなかった。バティスタが出国したというニュースが広まったとき、ぼくたちの多くは信じなかった。カストロ自身でさえびっくりして飛び上がった人間の一人だった。戦わないうちに戦いに勝ってしまった。カストロはもっとバティスタに感謝しなくてはならなかったのだ。独裁者は島を無傷のまま残し、カストロに傷一つ負わさずに出国したのだから」(P.78)

「ゲバラのスキャンダラスなホモ生活はキューバ中で、特にハバナでは衆知のことだが、他の者なら高くつくことはあっても、ゲバラほどの人物ともなると何をしても責任を問われなかった」(P.120)

「単に政治的姿勢のせいでボルヘスはノーベル文学賞を阻止されたのだ。ボルヘスは今世紀の最も重要なラテンアメリカの作家の一人である。たぶんいちばん重要な作家である。だが、ノーベル賞はフォークナーの模倣、カストロの個人的な友人、生まれながらの日和見主義者であるガブリエル・ガルシア=マルケスに与えられた。その作品はいくつか美点がないわけではないが、安物の人民主義が浸透しており、忘却の内に死んだり軽視されたりしてきた偉大な作家たちの高みには達していない」(P.390)
共産主義は何故国民を虐殺するのか ★★★★☆
共産国家では、国民は監視する側とされる側に二分される。監視される側は、カンボジアが典型だが、虐殺されることもある。殺されないだけ、生きていけるだけ幸せという状況が待っている。こうした狂気の国家は、ソ連から始まり、中国、北朝鮮へと続く訳だが、そうした国で作家がどういう運命を辿るのか、一種の典型例としてこの本は教えてくれる。今もなお、キューバや北朝鮮では国民が奴隷労働させられているのか、と考えると、一人の体験談だが、読後感は余りにも重い。
古代人の言葉 ★★★★★
ゲイである事、不埒な作家であること、
反革命的であること・・。
何れも許される事がない国、キューバ。
迫害故にそこから亡命し、
エイズの病苦からNYで自死した流浪の作家、
レイナルド・アレナス。

これは彼の死の直前の自伝だ。
この驚くべきエネルギーに満ちた小説
(そう呼んで差し支えない)を書き上げた
時点で、アレナスは深くエイズに身体を
侵されている。

男たち、彼らとのセックス、弾圧、投獄、亡命。

口述と筆記から書かれた本書は、
全体が混沌とした描写と錯綜した記憶の断片で
埋め尽くされている。

日付も無く、時系列もあまり意識されていない。
自らも体験したであろう、世界を動かした
歴史的事件にも、触れない。
そもそも、事実なのかどうかさえ疑わしい
事柄も数多く記述され、
島田雅彦が推薦文で語るように、
世界は古代人の言葉で埋め尽くされる。


アレナスは病に打ちのめされた体で、
怒り、絶望し、呪い、耐え難い望郷と郷愁と
呪詛を同時に叫んでいる。
あまりにも死期を意識しすぎたか、
かれの天性の才である、うねり、ほとばしる
言葉のリズムが、ここでは崩れがちだ。


だが、それによってこの本が陰惨なものに
なる事はない。
嘆きではなく、描写そのものに発狂寸前とも
言うべきユーモアが満ちているからだ。
結果として、驚くべき事にこれは正統的な
ピカレスク小説としても存在し得ている
(古代叙事詩!)。

カリブの赤い島、そこから逃げ出した1人の
ホモが生んだ奇跡。

小説としての純然たる達成度は
かれの他の著作に譲るだろう。
だが、間違いなく、「夜になるまえに」は
アレナスの最高傑作のひとつである。
生きること ★★★★★
生と痛みにあふれた本。それでも決して痛々しい暗さではなく、むしろキューバの光あふれる色彩や太陽、まばゆい海やそこに内在する喜びを印象として残すから不思議だ。でもなんて沢山の悲しみを抱えている国なんだろう。
個人的には、いつかキューバを訪れたいと思っていたが、簡単に行くことを考えられなくなった。それから作中に登場する、これまで愛読していた実在の作家、詩人について新たな面を知り、これもまた複雑な気持ちにさせられている。
時間をおいて、また読んでみたい。
自由を求めて ★★★★★
作家として優れた才能を持ちながら、キューバのカストロ政権の下で同性愛者として迫害されつづけた人生。自由を求めて死の恐怖におびえながらアメリカに亡命するものの、そこではキューバのような生命力溢れる海や空もなく、心を満たしてくれるものは見つからなかった。でも彼の幼少時代の経験や性的冒険は私たちが持っていない魂の自由を感じさせます。彼の人生は幸せではなかったかもしれないけれど、私は彼が短い人生を誰よりも壮絶に駆け抜け、誰よりも必死に生きていた、そのことを充実した人生だったと思いたい。私たちに自由とは何か、心に大きな波紋を残す作品です。