反近代のマニフェスト
★★★★☆
このように透徹した文章がすでに書かれていたのだ。
近代に対する疑い、中途半端な否定は世の中に満ち溢れているが
否定の代償を見極め現今の繁栄をも否定し去る文章がまずまれだ。
加えるに、清貧の思想にあるルサンチマンは微塵もない。ひたすら
おおらかな農本思想に裏打ちされているが、根本は著者のこの国に
対するビジョンである。そして、それは50年におよぶ文物との
無私な交流によって成ったことがわかる。
このビジョンは素晴らしいものであるが、またこのうちにあって
著者が確固たる自信と喜びを我が物としていることは疑いないが、
われわれのなすべきは、この国の現在を明晰に把握し、農業以外の
生業にあってもこのような自信と喜びを抱けるように生活を立て直す
ことであろう。