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夢は荒れ地を (文春文庫)

価格: ¥940
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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あまりにも長い間影を視ている人間は影そのものになってしまう ★★★★★
 私たちはカンボジアという国に関して何を知っているのでしょうか?ポル・ポト
派の多量虐殺、政府に蔓延する汚職、人身売買、地雷撤去 等々。ネットで検索しても
カンボジア人の息づかいは、いまひとつ響いてきません。豊かで平和な日本で
カンボジアはあまりにも遠く、貧しい東南アジアのひとつでしかありません。
豊かではあっても日本人はそれなりに自分たちの事でいっぱい、いっぱいです。
直接利害のない東南アジアの一国に関心を向ける事はめったにありません。
本書はフィクションという手法を用い、カンボジアの現状を単なる記号から
(漠然であるものの)リアリティをもって感じさせてもらえます。

 そんな国にスポットを当てて登場する日本人の目をとおしてその国を語ってくれ
る作者の作風は彼の得意とするところです。日本人は何人か登場しますが、
本編ではどうでもいい端役でいい味を出しているのが在カンボジア日本大使館
「伊達安春」です。外務省ノンキャリアの参事官はクメール語を覚えようとせず、
すべて英語で押し通します。情報収集はもっぱらアメリカ大使館と日本のNGOに頼
りきり、霞ヶ関にインテリジェンスとして打電しています。情報入手のために用意
されている機密費は自宅の高級家具やフランスのビンテージ・ワイン購入に費やされ、
やがて実家へと送られます。あくまでフィクションの世界でのことですが
当たらずといえども遠からずいったところではないでしょうか。

 カンボジアの現状は悲惨極まりありません。しかし、先進国の論理で援助をする
ことでは解決するのは困難です。本書では「殺しあわないかぎり何も解決できない」
というクメールの古い諺のとおり、なんともやりきれない無力感を感じ
させる内容ではありますが、少なくとも本書を読む事により、私にとって
カンボジアは one of them では無くなりました。
船戸らしい作品 ★★★★★
カンボジアを舞台とした船戸らしい作品だ。
法の及ばない場所で強く“悪く”生きる日本人が越路。越路の自衛隊時代の同僚であり友人である楢本。カンボジアの子供達の教育のために尽力する丹波。もとクメールルージュのゲリラで、投降後は仲間達と村の建設を進めるクメール人チア・サミン。
カンボジアで今も公然と行なわれている人身売買という悲劇、このシステムを壊すため越路が計画するプロジェクト。これの進行を軸に物語りは進んでいく。
しかし、彼らを襲う試練と悲劇、裏切り。とくに丹波のエピソードは読んでいて涙が出そうなくらいだ。
そして溜めに溜めた憤りをラストで発散するわけだが、この著者のことだからハッピーエンドにはならない。
面白さとパワーにあふれた作品だ。
外務省役人ちぃせー・・・ ★★★★★
 カンボジア経済援助で集まるカネが、例によって上層部でツマみ喰いされ、その結果ニュー・リッチと呼ばれる層が出来上がり、貧困層との格差により人の値打ちが下がり、輸出ビジネスも成長しない中で特に何の技術も持たなくても外貨を稼げるのは女のコだけ、という半ば強引だが一般人が辿り着き易い素材がベースになっている。
 所で偶然、この本と佐藤優氏の「国家の崩壊」を併読してたのだが、奇妙にも、
 ・ ロシア正教会の、キャリア組「黒司祭」、在俗の「白司祭」、
 ・ カンボジア小乗仏教の「ユアンマット派(王室中心)」、「モハーニカーイ」派(在俗)」
 の対比構造、そして両者共通で、「イスラム」等、宗教の話がちょこちょこ出てくるのと、
 ・ 佐藤氏のプロテスタントとしての精神的基礎、
 ・ この本の主人公の一人がメソジスト教会で培った語学力等、
 既視感を覚える場面が多々あった。ちなみに佐藤氏の父母の経歴が「国家の崩壊」で語られるのだが、船戸ファンなら、「・・・うっ!コイツは・・・!?」と、思う筈だ。ご一読をお勧めする(まァ、佐藤氏は街角や電車の中で大声を張り上げるようなマネはしなかったと思いますケドね)。
よくできてますが。。。 ★★☆☆☆
船戸氏の本は今日、はじめて読みました。カンボジアの今について結構詳しいように書いてあり、筋としては面白かったです。アンコールトムの古文書などという細かい誤謬は突っ込みいれることはやめておきますが、しかし、決定的なまちがいとして、日本とカンボジアとの時差を間違えてます。あまりに基本的な間違いで興ざめしました。日本との時差は確かに2時間ですが、カンボジアのほうが2時間遅れのはずなのに逆になってます。現地で朝9時に上司に電話して上司が出勤前だったり・・・フィアンセ?に夜中の0時前に電話したら日本は深夜のはずです。筋が面白かっただけにそういうリアリティは損なわれてはいけないと思います。日本人はアジアのことを知らなすぎるという、帯が恥ずかしくなります。著者・編集者も連載時からチェックしたり、文春に指摘する読者もいなかったのでしょうか。アジアのことを知らないと思うならそのくらいは出版前に調べてほしかったですね。改稿を希望します。内容は面白かったので。
アメリカの古き時代のハードボイルド ★★★★★
腐敗、人身売買等がはびこるカンボジアで、夢を見てしまった人々の物語。PKOで派遣され、そこで行方をたった男、その男を追いかける親友、元ゲリラのクメール人の兵士たちが、主人公。自分達の夢や思いを実現するために、地雷であれはてた地を疾走します。

うーん、良かったです。スケールの大きさ、カンボジアという背景の面白さ、筋の面白さ、登場人物の魅力などで、一気に読ませます。かなりの厚さがある本ですが、全然長さを感じさせない物語でした。

派手な殺戮シーンや暴力シーンは、少ないもです。その分、夢や思いにこだわる人々の黙々とした行動などが、冒険小説というより、アメリカの古き時代のハードボイルドを彷彿させました。