「サラリーマンくん」編でも大いに泣けましたが、今回の「スーパータクシーくん」編は後半、涙が止まりませんでした。
主人公の心の弱さに共感してしまう。
辛い過去。それでもポジティブに生きる毎日。とめどない愛情。快楽への渇望。
これだけリアルに「現代の人間」を描ききっている作品は他に類を見ない。
娘への愛を心の底から語りながらも、自己の保身のために最愛の娘を汚れた大人の世界に投じてしまう悲哀。
涙が止まりません。
「なるようになる人生は、なるようにしかならない」
自堕落な人間への戒めでもなければ、不幸な人間を題材してニヒリズムを提示する訳でもない。
馬鹿な人間の本質を剥き身にした、普通にある物語。
読後、ミハエル・ハネケの映画を見たときに抱いた、何か爽快な、ピュアな気持ちになりました。

ウシジマくんはほとんど出てこなくなって久しいな。
ウサギの世話はちゃんとしてるん･･･だろうな。

この漫画はやはりユーモラスであるからこそ怖い。
今巻も滑稽な人物が、笑いようのない現実に呑み込まれて生活している。

これが「リアル」ですよ。と言われれば、それは違うと思うが、
「リアル」の「漫画的表現」ですよ。と言われれば、そうだと思うし、素晴らしい。

自分の周りでは新井英樹ファン層とウシジマ君ファン層が似ていると思うのだが、
おそらくその「リアリティの漫画表現」が似ているからではないかな？と私見。

ただひたすらショッキングな内容で人気を集める漫画ですが、違法金融業者を讚美して底辺馬鹿にする内容に吐気を覚えます。
作者は何が言いたいんでしょうか。社会派気取り?

人間の醜さというか怖い部分がリアルに感じられ、読んでいて自分に重ね合わせると怖くなる。初期のころとは作品のイメージが変わってきた印象を受けるが、続きが気になる作品。

非現実的な内容でありながら、現実の悲壮感を漂わせる作品なので楽しみにしています。

ペッパーさんの言うとおり、以前のウシジマ君に少し戻りつつあるように感じる。
ただ、タクシー運転手を「社内の底辺」と台詞として言わせるのは芸がない。
ストーリー展開の中で感じ取らせることが必要だったのではないか。

本筋とは関係ないが、癖のある人間を簡単に登場させてはその後の伏線に使わない
という、勿体無いことをしている。

佳作とは思うが、以前のキャラの立て方に比べると散漫な感じが否めない。
真鍋氏は一旦休んで、原作ものなどもやってみたらどうか？
桐野夏生とか真鍋氏の画風に合いそうな気がするが...。