うーん、時代?
★★★☆☆
帯に、圧巻の密室トリックと驚愕の結末に瞠目せよ!
‥この本を帯のない状態で購入しておいてよかった。
っていうか、それでもそこまでは面白くなかったですな。
ただ、ちょっと興味深かったのは無人島に追放された新興宗教のメンバーたちが
疑心暗鬼でクリスティの小説みたいに一人消えてまた消えて、最後に残ったのは誰?!という作品。
それ以外は大仰なトリックも妙に時代がかった物語も、なんか古くさくて楽しめなかった。
江戸川乱歩の有名な2銭銅貨からの引用に、ん?と思ったのだけど、
そう、ちょっと昔懐かしの推理小説って感じだったのよね。
単行本版+「夏の雪、冬のサンバ」
★★★★☆
◆「そして名探偵は生まれた」
◆「生存者、一名」 ◆「館という名の楽園で」
◆「夏の雪、冬のサンバ」
大都会のただなかにありながら、そこだけ時代に取り残されたような
雰囲気を醸す築数十年を経た木造モルタルのアパート「第一柏木荘」。
そこで暮らす中国人男性が、紙幣が散乱した
部屋のなかで殺害されているのが発見される。
アパートの周囲には雪が積もっていて、アパートの入口に向かう足跡は、
発見者のもの以外にもう一筋あり、それが犯人のものと思われたが……。
序盤に仕掛けられる作者十八番の叙述トリックに始まり、タイトルが暗示する
時間錯誤のトリック、ボロアパートゆえに可能な消失トリック、そして、最後に
探偵がうっかり一本とられてしまう外国人ならではの騙しの手口など、どれも
舞台であるアパートやその住人の特性が活かされた秀逸なものとなっています。
また、乱歩の「二銭銅貨」から台詞が引用されていたり、
探偵が抜かりなく天井裏をあらためていく姿にはニヤリ。
(どちらも、ミスディレクションとしても機能しています)
400円文庫の作品二編+書き下ろし中編
★★★★☆
◆「そして名探偵は生まれた」
多くの難事件を解決してきた名探偵・影浦逸水は、自らが関わった事件を本
にまとめて発表するも、関係者に訴えられ、一千万円単位の賠償金を背負う
羽目に陥っていた。
そんな彼が、助手の武邑大空とともに会社社長に
招かれて行った山荘で、またもや事件に遭遇する。
密室状況の部屋で、社長が殺害されていたのだ。
影浦は犯人をすぐに指摘するも、事件の解決には無関心
を決め込もうとしていたのだが、突然、前言を撤回し……。
密室トリック自体は、作者の××のリサイクル。
もっとも、本作の主眼は、ハウダニットではなく、ミステリにおいて特権的存在である
“名探偵”に対しての、パロディやアイロニーにあります(卓越した推理力はあっても、
生活力や社会性が欠如している、とか)。
また、“名探偵萌えのワトソン役”という武邑のキャラは、アレとかコレを連想
しますが、そのどちらよりも、彼の選択は、身も蓋もないものとなっています。
(タイトルによって、かなりあからさまに暗示されていますがw)
◆「生存者、一名」
◆「館という名の楽園で」
全体にはいまいち。
★★☆☆☆
中編ミステリー4作だが、面白かったのは「生存者一名」だけであとは技巧は凝らしているが、話にリアリティさや暗さがなく、少しふざけ気味の感じの作品もあり、全体にはいまいちな印象。
こういう本の出し方は
★★★☆☆
2005年に出た単行本の文庫化。
文庫化に当たって新たに「夏の雪、冬のサンバ」が加えられている。
結局のところ、本書には「そして名探偵は生まれた」「生存者、一名」「館という名の楽園で」「夏の雪、冬のサンバ」の4本の中篇が収録されている。
いずれも、既刊・既出の小説である。
「そして名探偵は生まれた」は単行本の際に書き下ろしとして加えられたもの。
「生存者、一名」は、2000年に祥伝社から400円文庫の一冊として出たもの。恩田陸『puzzle』、近藤史恵『この島でいちばん高いところ』、西澤保彦『なつこ、孤島に囚われ。』とともに「無人島」テーマの競作で書かれたものとなる。2002年には4本を合本にしたアンソロジー『絶海』にも収められている。
「館という名の楽園で」も、2003年に祥伝社から400円文庫として出たもので、柄刀一『殺意は幽霊館から』とともに「館ミステリー」競作のひとつになる。
「夏の雪、冬のサンバ」は二階堂黎人の編纂した『密室殺人大百科』(単行本は2000年に原書房から、文庫版は2003年に講談社から出ている)に収められていたもの。
こういう本の出し方はちょっとやめて欲しい。
内容は、いずれも密室(密閉空間)もの。
「生存者、一名」が手が込んでいて面白い。
「そして名探偵は生まれた」と「館という名の楽園で」はなかばパロディとして読むものだろう。けっこう楽しめた。
「夏の雪、冬のサンバ」もバカミスのひとつとして受け止めるべきか?