今回の最新巻は、パターン化したストーリー展開が目立ちました。筆者の作品を読み慣れた人にとっては、きっとどこかで読んでゐる労組のスキャンダル的攪乱作戦が登場です。少し嘘っぽい芝居仕立てに演出してゐるのです。二年も前の解雇劇を蒸し返して、反会社のスキャンダル的イメージで社長を貶めるものです。現実性の面で本当にあり得るのかなとついつい私は思ってしまひました。そして、もう一つのこの漫画の最近の特徴は、時事解説といふ点が今回顕著に出てゐます。今回は、技術でなく技術者の引き抜きをはかる韓国企業の現在を分かりやすく描いてくれてゐます。どれもさらっと描かれてゐますが、私には主人公が、何かを成し遂げんとするやうな志や情熱はあまり感じられず、パターン化した新「水戸黄門」型の大作漫画で落ち着いてしまってゐるかなと思はれます。