冥王星O、という名前のSF短編集。
★★★★☆
『魔界探偵冥王星O ジャンクションのJ』です。
Jの越前魔太郎は、新城カズマです。
……つまり、作品全体が難解なメタフィクションかつ難解なハードSFです。
探偵と名乗っていても、これまで冥王星OシリーズにSF要素が薄くても、これがガチのSFです。
メタ嫌い・SF嫌いな方は回れ右してください。
ジャンクションということでこれまでのシリーズの総まとめ的な作品ですが、そこは新城カズマだけあって社会接続/身体/虚構がダイレクトに繋がっているある意味「訳の分からない」作品です。
最初はいつもの冥王星Oシリーズのように【彼ら】との対立を軸に据えて描かれていきます。が、それを外部から記録しているはずの越前魔太郎が虚構の中に取り込まれ、いつの間にか古代から遠未来までを繋ぐ壮大なサーガの一部、そして量子力学で言うところの観測者と化してしまいます。
面白いのはなんといっても最終章たる4章。古代世界に突如として出現した広大な迷宮、宇宙進出時代に起きたバイオハザード、大統領の身に起きた奇妙な悲劇、閉鎖された近未来の学園……ありとあらゆるステージにありとあらゆる冥王星Oが出現していく様はまさに「冥王星Oの大安売り」。
平行世界+量子力学+メタフィクションという組み合わせは最近の日本SFで大流行しているある意味「三種の神器」なのですが、そういったお約束を踏まえて楽しめるSF好きにはおすすめします。