栄光のあとにくる静かなとき
★★★★★
常盤新平さんの「ニューヨーカーの時代」は本になるまえからダイナーズカードの雑誌に連載されていた山の上ホテルのことを書いたものと共に楽しく読んでいた。思えば、あの雑誌の編集者は大変りっぱな仕事をしていたというのか、志が高く、わたしは西尾忠久さんのロンドンを軸にしたエッセイも読んでいたし、面白い記事がいくつもあった。
この本は「ニューヨーカー」というアメリカのコスモポリタンな部分を代表する雑誌の評伝である。常盤さんの小説はわたしは読んだことがないが、このひとの書くルポタージュのようなもの、つまり、「ニューヨークの古本屋」などは偏愛しているし「四季の味」という雑誌の連載もわたしは好きだ。
それにしても、ウィリアム・ショーンがいなければアメリカの文芸は成り立たなかっただろうし、ショーンがかかわったことでアーレントは「イスラエルのアイヒマン」を書くことができたし、トルーマン・カポーティが産まれ、また、ボルヘスが書き、優秀なスタッフライターが加わり、レイモンド・カーヴァーが短編を書いていたのだ。(カーヴァーについては「ニューヨーカー」に面白い記事があり同紙の電信版でも読める)わたしも日本にこういうすばらしい雑誌があればよいと思う。