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ムッシュー・テスト (岩波文庫)

価格: ¥567
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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不可能の紳士 ★★★★★
まるでつかみどころのない、どこか人間離れしている一人の紳士について、さまざまな角度から描く短篇集。

「この種の人間の生存は現実では数十分以上つづくことはできないだろう」
ムッシュー・テストについて、序で述べられている言葉。そして問いが続く。
「なにゆえにムッシュー・テストは不可能なのか?」

「心はひとつの無人島」「神なき神秘家」「胸像のない人間」・・・このほかにも、彼について述べられる言葉は、一種の謎かけのようだ。
もし本当にこんな人間がいるのだとしたら、およそ言葉で語るのは不可能だと思うし、一方で彼は文学の中にしか存在しないとも思う。

ヴァレリーは難解な作家と称される。
彼が生涯かけて取り組んだ「ムッシュー・テスト」は、彼の思考の深淵をぽかりとのぞかせる。
わかりやすい新訳でもヴァレリーを ★★★★★
 この作品は長いこと小林秀雄訳で知られてきた。粟津則雄の訳も福武文庫に入って、親しまれていた。私は両方とも持っているが、主に読んできたのは小林訳のほうだ。今回の清水訳はたいへんわかりやすい。小林訳は文学的香りは高いと思うのだが、内容の理解しやすさという点では、靴のうえから足のかゆいところを掻くようなところがあった。その点で、この新訳は画期的といってもよいのではないか。
 「ムッシュー・テストと劇場で」も興味深いが、箴言集的な作品もヴァレリーの知の尋常ならざるところがうかがえて、一読の価値がある。ヴァレリーを読んでいると、流行の現代思想が見かけはたいそうだが内容空虚な言葉の伽藍に見えてくることがある(実際、ヴァレリーはダ・ヴィンチ論などで「哲学」批判をしている。ヴァレリーは自らをアテネの学堂に踏み込んだ野蛮人にたとえたのだ。)。根元的な思考の精髄は真の意味での普遍性を感じさせてくれる。訳者自身の解説もていねいで勉強になる。
理性への反撃 ★★★★★
「レオナルド・ダ・ヴィンチの方法」、「カイエ」等の作品群からもわかるとおりポール・ヴァレリーは文学から哲学、科学まで広範な範囲について勉強していた20世紀の万能人である。
そんな彼が25歳のときに、この本の中心となっている「ムッシュー・テストと劇場で」の主要部が書かれ、また彼の成長とともにこの作品の理解への補助線として書かれた作品群が「ムッシュー・テストと劇場で」とともにわかりやすい訳になってこの本にまとめられている。

内容はまさに彼が若いときに心の内面に作り出した、正確さや可能性、また理性の権化であるムッシュー・テスト氏が文学という形をとって彼の存在意味が思考実験される。テスト氏は作者の分身であるとともにその彼の話をする「わたし」も作者の分身と思われ、これを読んだ私は彼らの静かな戦いが繰り広げられたのを感じた。
これは現代の科学者でさえも読む価値のある文学という形をとった理性への反撃書である。