音楽を作ることによって見知らぬ人と出会い、自己の存在意義を知る。それがあることの掛け替えのなさと、もしなければ? という恐怖を宮沢和史はほかの誰よりも知っているのだろう。バンドが日本各地で草の根的なライブ活動を展開したのは決して美談でなく、必要に迫られた行為だった。そしてその結実としてここにある11の楽曲には、ブラジルも沖縄もスカも、すべて既にバンドの血肉になったがゆえの、肩肘張らない優しさがある。
デビュー15周年ライブで楽曲をプレゼントするという画期的な試みで、「歌は自由に広がってこそ」というアティチュードを見せた今の彼らの姿がこのアルバムでも伺える。特に歌の原点を描く「僕にできるすべて」や、ラストの「歌」は背筋が伸びる思い。(石角友香)