本書は、入試で求められる研究計画書について、「研究」や「計画」に関する基本的な考え方から実際の書き方に至るまでを、いままで計画書を書いたことがない人、特に社会人の大学院志望者に向けて、わかりやすく解説したものである。
大学卒業後、企業勤務を経て英国の大学院で博士課程を修了し、現在は慶應義塾大学大学院教授である著者は、自身の経験から、社会人が大学院を目指す場合の受験者の立場、また入試を行う立場の両方を知っており、読者としては心強い。
本書の特徴の第1は、タイトルにあるように「書き方のハウツー」ではなく「研究についての考え方」を重視した点にある。この点が明確になっていない計画書は、しょせん底が浅いものになるだろう。第2の特徴は計画書作成の過程を重視していることにある。研究計画を練る中で、自分自身の思考や志向などについて思いめぐらすことも含め、作成それ自体を学ぶ場としてとらえているのである。この点は、しばらく大学を離れていた社会人にはリハビリにも、またこれからの研究生活の準備にもなりうるだろう。
さらに本書には、実際の研究計画書をサンプルとしてそれに対する筆者の詳しいコメントがつけられた事例が28件掲載されている。
本書は、月刊「Executive」誌に不定期に連載されたものをもとに大幅加筆したものだが、連載時の読者には大学院在籍中の学生が多数いたのも特徴といえる。大学院入学後の研究計画にも役立つし、研究機関や企業における計画書や企画書づくりにも参考になる部分があるようだ。(佐伯秀子)