マルチラテラリズムvsユニラテラリズム
★★★★☆
戦後の国際秩序の構築をマルチラテラリズムとユニラテラリズムの対立という観点から切って、分析を加えている本。
マルチラテラリズムは多国間協調主義とも訳され(ただし細かい意味はずれるのだが)、普遍的な制度や合意のもと、国家が振る舞うような考え方である。
一方、ユニラテラリズムは単独行動主義とも訳され(これもまた細かい意味はずれるのだが)、制度にとらわれずに国家がふるまうような考え方である。
筆者ラギーはこのうちマルチラテラリズムの方を支持し、この観点から政策提言を行っている。
コンストラクティビズムに属すると言われる彼の議論は、制度的なものの価値を切り捨てるリアリズムとは明確に異なるが、客観科学を目指すコヘイン以降のリベラリズムとも異なる。
彼の議論は、価値判断が多分になされているという点からも、ある種批判理論の系譜も含んでいる。
そのラギーが戦後国際体制を説明するために持ち出すアイデアは「埋め込まれた自由主義」という発想である。
国際的な自由化と、ケインズ主義というある種自由を制限する方向を同時に含んだ、いわば妥協としての制度が構築されてきたのである。
本書の大部分は理論ではなく、具体的な国際政治の変化の歴史をたどっている。
そういう点から、コンストラクティビズムの希少な邦訳ということで期待して読んだ私としては、いささか期待外れ(というか間違った期待を本書にしていた)ではあったのだが。