学者としての藤原帰一、その真価
★★★★★
すっかり論壇活動で有名になってしまった藤原帰一。
正直に言えば、これほど体系的な教科書を書くことが出来る人物だとは思っていなかった。
よく小さく纏まった入門者向けの教科書。それが私の本書への評価である。
本書の目的は、国際政治に関する基本的な概念を理解すること、である。
その為に西洋史それも近世の歴史まで遡った議論がある一方で、
同時多発テロ事件や北朝鮮の核開発といった問題には一切言及されていない。
私は国際政治をこれから学ぼうとする方にとっては、むしろ本書の様な構成が適していると考える。
個別の事実に注目して、それの十分な説明を求めるのではなくて、
理論と歴史(さらには思想)の相互検証を通してこそ、国際政治への分析能力が培えるはずだからだ。
巻末には、「研究課題」と題された練習問題が載せられている。
参考文献に挙げられている書物も、精選された、有益なものばかりである。
本書はこれから国際政治、国際関係論を学ぼうとする方にとって有益な書となろう。