本書では、著者がこれまで扱った、不登校をはじめさまざまな家族における問題が解決あるいは解決に向かった実例について、プライバシーが守られる程度の詳しさで、実に読みやすく語られている。問題行動を起こす本人について過度な心理分析を行わないでも、ちょっとしたセラピストによる介入や示唆だけで、問題全体が劇的な解決に向かうことがあることがよくわかる。
ちなみによりこの分野について知りたい場合は、検索キーワードとして家族療法・短期療法(ブリーフセラピー)・物語療法(ナラティブセラピー)・解決志向アプローチ(ソリューション・フォーカスド・アプローチ)などが挙げられる。専門家向けのような体裁の本でも非常に読みやすいのが(フロイトやラカンの難解な精神分析とは全く異なり)この分野の特徴。
そして家族がどのような姿を思い描くのか、そしてそのためにはどのような取り組みが必要か。「決定」「父親さまざま」「期待」など16章からなる複数の見方によって家族の姿を見ている。決して問題となっている原因を突き止め責任を求めるという姿勢ではなく、今後どうしていくのかが最大の焦点だ。
実際の相談をもとにして書かれているため、幅のある自然な事例が集められている。この本が自分の家族を見つめなおす機会になればよいと思う。問題意識を持っている人だけでなく、自分の家族は大丈夫だと思っている人にも読んでもらいたい本だ。