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観光の地域ブランディング―交流によるまちづくりのしくみ

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 学芸出版社
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精神論ではない観光まちづくり論 ★★★★★
最近観光関連の書籍は数多く出版されている。
様々な目的で書かれたものがあって、
実務者向けのビジネス書のようなものから、
専門書や教科書まで色々である。

ビジネス書のような観光関係の本、とくにまちづくりの本に関しては、
成功した事例の責任者がその成功体験を語り、
結局のところその成功の要因はリーダーシップや、仲間たちの絆
などの精神論的なところに帰着するものが多いように思える。
確かにそれはそれで、役には立つのかもしれないが、
他地域には応用が利かないように感じる。

その中で本書は、様々な事例に対して一つのモデルを
適用して、事例の特徴をあぶり出す構造になっているため、
地域間の比較・対照をする事ができ、大変面白い。

本書の中で扱われている事例だけを取ってみても大変多様である。

・ご当地カレーの北海道富良野地域
・温泉を活用した北海道函館市
・らき☆すたの埼玉県鷲宮町
・鉄道を活用した山形県置賜地域
・スキーリゾートに関する北海道ニセコ地域
・湿原保全の北海道浜中町
・エコツーリズムの北海道標津町
・オーストラリアタスマニア州の政府観光局

北大の教員と院生が出しているため北海道の事例が多いが、
それぞれ都市部や農村部など様々であるし、
鷲宮(アニメファンの間では聖地)や、山形、タスマニア
など、多岐にわたっている。

多様な事例を一つのモデルで解釈しているところに
この本の面白さがある。こういったモデルで物事を見ると
自分の地域や有名な観光地などの見方も変わる。

また、著者らはこのモデルを完璧なもので変化しないもの
とはせずに、これがスタートであり、今後どんどん改善したい、
という想いを込めているようである。

確かに、事例の中にはモデルを活用しない方がその全体像が
見えやすいと思われるようなものもあるし、実際に身近な事例などを
モデルで考えても、モデルに対する疑問や改善点が多く見えてくる。

ただ、そのような分析的な考察の糸口としてモデルを提示してくれている
というのは非常に有り難いし、
学問的にも、実務的にも価値があるのではないだろうか。

リーダーシップとか団結力とか精神論を言われるよりは
ずっと客観的に物事を見る事ができる。
その点を重視し、また、今後の期待も込めて☆5つとしたい。