リアルな陰陽師
★★★★☆
表題通り、陰陽師について書かれた本である。
副題に「安倍晴明と蘆屋道満」とついてあるが、彼ら個人の記述は少なく、基本的には陰陽師という職業自体が、平安社会で実際にはどのような役割を担っていたのか、という説明にほとんどのページが割かれていると思って良い。
さらに、その少ない安倍晴明の記述も、映画や漫画でよく知られているような超人的な活躍が描かれているわけではなく、ただただ実際の安倍晴明がどのような人物であったかが考察されているのであり、「晴明が式神を遣って奇跡を起こす」ような活躍をこの本に求めるのは誤っているので、その点には注意が必要かもしれない。
「超人的な安倍晴明」を通して陰陽師全体に興味を持った人が、陰陽師という職業自体の正確な知識と、彼らが平安時代にどの程度重要視されていたかを知るにはなかなか良い本だと思う。
少し文章が硬く、読者に面白く読ませようとする意志はあまり感じられないが、一読の価値は有り。