一つがかなうと…その先には?
★★★★★
あるところに貧乏なワルターという男の人がいました。
ワルターはリンゴの木を一本だけ持っていましたが、この木はまだ実がなったことがありませんでした。それ以上に、花すらつけたことがなかったのです。
隣の家のリンゴの木がたくさんの実をつけているのをみて、すっかり悲しくなったワルターは、心をこめて祈るのでした。
「ひとつでいいから、うちのきにもリンゴがなりますように。そんなにりっぱなみでなくてもいいのです。ひとつでいいからほしいのです」
果たしてこの願いはかなえられました。
ある春の夜、ワルターのリンゴの木に、白い花がひとつ咲きました。
ワルターはそれはもう喜んで、リンゴの木の周りを飛び跳ねて喜びました。夜も昼も花の番をし、花を大事に大事にに守ってやるのでした。
こうして育てられたリンゴの花は、夏には小さな実をつけ、日増しに大きくなり、秋にはりっぱなリンゴになったのです。
でも…ワルターは取り入れ時になってもリンゴをとりませんでした。あと一日、あと一日…。
リンゴはどんどん大きくなりましたが、ワルターはそれでもとりませんでした…。
そして…
とうとう、りんごはとんでもなく大きくなってしまいました。
お化けのように大きくて、売りに行くにも汽車に入らず、仕方なく背中に抱えて汗をしながら懸命に歩くワルターの挿絵が心打たれます。
市場でどんなに高く売れるだろう。
ただ、それだけを夢みて頑張りました。
でも…
市場では口々にののしられます。
「こんなリンゴ見た事ない」
「この嘘つきめ」
ワルターが予想だにしなかった事態に戸惑っています。
結局、夜になってもリンゴは売れませんでした。
仕方なくワルターは真夜中をリンゴを背負って帰りました。
☆。.:*:・'゜★。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜★
ワルターの素直さ、純朴さ、そして、憎めない彼の姿。
けなげさ。
何ともユーモア溢れる、そして、ほっこりとさせてくれる、とても素敵な絵本です。
ほんの ちいさな おねがい
★★★★☆
心をこめて祈ったちいさな願いを、神さまは聞き入れてくださったのに
うれしくないのはなぜなんでしょう?
それどころか、苦しくてつらくて…。
小さい子にはちょっと難しいかもしれませんが、子どもが描いた絵のようなタッチが、
主人公’ワルター’の悲哀をより味わい深い物にしています。
恐いはずの’リュウ’や’秘密警察官’たちの表情にもご注目あれ。
りんごは幸せとともに
★★★★★
ワルターの持っている1本のリンゴの木は、まだ一個の実もつけたことがありません。ワルターは、春になると隣の庭のリンゴの花を見ては哀しく思い、秋になると他所のリンゴの実を羨ましく眺めていました。リンゴがいっぱい入った籠を担ぐ人を見ると、自分の木が一個のリンゴもつけない哀しみが、どんどん大きくなっていくのでした。
どうしたものか・・・。ワルターは心をこめて祈ることにしました。
『ひとつでいいから、うちの木にもリンゴがなりますように。そんなにりっぱな実でなくてもいいのです。ひとつでいいから欲しいのです。』と、夜のベッドの中で祈りました。
願いは叶い、春に白い花が一つ咲きました。ちいさな花を見つけたワルターは、幸せの絶頂。それから夜も昼も花と共に過ごしたのです。風が吹けば手で囲い、強い日差しには手で覆って影をつくりと、それはもう大事に花を守ったのです。秋になり小さな花が実になるとワルターのリンゴへの愛情はなおさら増していきます。日増しに大きくなるリンゴを収穫もせず見守るばかりでした。
収穫して売りに行こうと決心したときのリンゴの大きさは、貨車にも積めないほどの大きさになっていました。
市場では、おばけリンゴとか偽物リンゴと言われ、誰も買ってくれませんでした。
大きくなりすぎたオバケリンゴの結末はいかに・・・。
このお話しは7カ国で発行されており、子供も大人も楽しめる絵本です。「むかし、あるところに・・・」で始まるこのお話は古典的な絵本のようであり、意外な場面転換も楽しめます。ワルターのリンゴに寄せる期待をリンゴの大きさで象徴してあり、それはまるで現在の子育てに伴う子供への期待度にも似ているかのようです。「小さなリンゴが一つ実ればいい・・・。」という小さな願いが、一つの花を見た途端に喜びのあまり過保護になっていくのです。風が吹けば風に立ち向かう力を、陽射しが強ければ枯れない力を摘みとってしまったワルターに、子育てと重ね合わせてみましょうか。
なぜ画像がないんだ!こんなに美しい絵本なのに・・
★★★★★
こんなに素敵な絵本なのに!何故画像がないんですか!ゼッタイに許せない。ところでこの本、ドイツの絵本とありますが、作者は実のところ、ポーランドの人です。素晴らしい絵そして文章です。ご近所の木にはリンゴが一杯なっている。だけど、ボクのリンゴの木には全然実がならない。神様、お願いです。ひとつでいいから、実をならせてください。すると願いが叶えられ、ひとつだけ素敵な夜に白いリンゴの花が咲く。(その絵が最高に素晴らしい!)そしてそのリンゴを主人公ワルターは大事に大事に育て、大きくなればなるほど勿体無くって全然食べられない。するとリンゴはどんどん大きくなり・・仕舞には、無茶苦茶大きいおばけリンゴ?になってしまう。
ボーランドがどういう歴史を背負った国が知っている人も知らない人も120%楽しめる素晴らしい絵本。本当に絵が美しい。そして文章も泣かせる。完璧な仕上がり。世界中での評価が驚異的に高いのも頷ける。もしこの本をこどもの頃読んだ人、そしてそれを記憶している人は本当に幸せな家に生まれた人です。
30年経ってもひきつけられる
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子供の頃、何度も読んだ絵本に30年ぶりに再会しました。
「なぜ、あんなに読み返したのか?」が知りたくて。今、物語の結末にたどりつくと、また読み返してしまう。大人になっても、どうとらえていいのか分からない不思議な感覚と、それを増幅させる絵です。