まず、論文には論文の形式がある。論文は、あるテーマにもとづく「問い」から始まり、「議論」を経て「答え」に至る「序論―本論―結論」で構成されていなければならない。論文での説得は論理と実証によって行わなければならないので、文学的美文は必要ないが、論理的・実証的説得力が不可欠となる。そこが、感想文やエッセイとの大きな違いであると著者は説く。レポートも論文の一形態であり、基本的な定義・要件は論文と変わらない。
本書では、「論文の要件と構成」を簡潔に説明した上で、「テーマ・問題の設定、本文の組み立て方」「注、引用、文献表のつけ方」「見本レポート」「インターネットの利用法」などを具体的に解説する。また、導入部に「テキスト批評」の章を設け、実際のゼミナールの場面を想定し、テキスト批評の方法を記述しているのも特徴といえる。テキスト批評とは、ある論文や著作を要約し、そこから自分なりの問題を発見・提起して議論を展開していくことであり、論文をまとめていく上で有効な訓練となる。
レポートを求められたにもかかわらず、作文を提出する大学生が多いようだが、そのことに問題を感じていない学生にこそ、本書を手にしてもらいたい。(清水英孝)