「角の生えた子どもは生け贄にならなければいけない」。そんな掟のある村に生まれたイコには2本の角が生えていた。ある年、イコは村の神官に連れられ、孤島にそびえ立つ城にいけにえとして捧げられた。彼はじっと静かに目を閉じていた。だが、突然起こった地震によってイコは閉じこめられていたカプセルから脱出し、城の中で自由の身となる。さまよい歩くうち、1人の少女と出会った。言葉の通じない2人。でもイコはそっと彼女に手を差し出す。「一緒に城から脱出しよう」。そこからイコと少女の冒険が始まった。
なによりもまず驚くのが、少女と手をつないだ瞬間の感覚。操作自体はR1ボタンを押すだけなのだが、デュアルショックから「ブルッ」とくる振動が、あたかも少女の手をとおして伝わる心臓の鼓動のように感じられるのだ。この甘く切ない青春を思い出すような演出と、精巧に作り込まれた世界観とが相まって、プレイヤーの心はいつしか勇敢で心優しいイコと重なり合う。この感覚が『ICO』の醍醐味といっても過言ではないだろう。純粋無垢で崇高な気持ちになりたいときに、ぜひプレイしてみてほしい。(荒木秀哉)