大胆不敵、破天荒な言動と、その中に垣間見える少女らしさが印象に残る
★★★☆☆
本書は明治、大正、昭和の不良少女の姿を、新聞記事等の史料を元に描き出している。
引用される資料の多くが漢字の多い候文(そうろうぶん)で、慣れない評者にとってはややフリガナ不足に感じられた。その点を乗り越えられれば、高校生程度の予備知識でほぼ戸惑いなく読み進められると思われる。
ただし、引用された資料を読むには一定の見識が要求される。まず筆者も書いているように、当時の史料は正確さよりも読み物としての面白さを重視して書かれている傾向がある。そのため実際以上に大げさに表現されていることが多い。また、そもそも記事に載る少女の行状には一定の希少性がある。大多数の少女が家や世間による規制に縛られていたからこそ、不良少女による事件が報道の対象となったのだと読むべきであろう。さらに少なからぬ史料が、不良少女が面白おかしく日々を送っている姿を前面に出して書かれているが、厳しい境遇におかれていた不良少女、不良行為が後の人生に大きく影を落とした少女が多かった点にも留意が必要であろう。
なお、社会が不良少女の行状をどのように受け止めたか、当時の司法や教育、社会政策全体の中で不良少女がどのように扱われていたかについては詳述されていないため、社会学的な分析を期待する読者にとっては物足りなく感じられるかもしれない。
全体としては、不良少女たちに強いシンパシーを抱き彼女たちの心情に寄り添いながら筆を進める著者に、共感しながら読んだ。通俗的になりやすい題材を、丁寧かつ学術的な視点を含んで紹介する河出らしさを感じる一冊だと感じた。