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“自分”のありか

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 世界思想社
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自分の底に扉を開く本質的な書 ★★★★★
金子みすずの詩や「千の風になって」に私たちが魅かれるのはなぜだろうか。現代において私たちは「自分探し」という名の下で,矮小化された出口のない「自分」という部屋に閉じ込められてしまっているのではないだろうか。これらの詩は,この部屋の向こうから聞こえてきて,壁に塗りこめられた扉のありかを私たちに告げてくれているのではないか。この本は,その扉の存在を様々な面からはっきりと示し,さらにその扉の向こう側の風景を描き出した本質的な書物だ。
まず第1章,第2章を通じて,〈自分〉の普遍性と個別性について,東井義男,ブーバー,ハイデガー,メルロ=ポンティ,フロム,トルストイ,フランクルらの思想を具体的に取りあげながら解説がなされる。次に第3章の前半でこの〈自分〉が相矛盾する普遍性と個別性が相即的に統一された存在であることが,禅仏教の「天上天下唯我独尊」,フランクルの「精神的無意識」,西谷啓治の「非意識」,西田幾多郎の「純粋経験」,「生命的根拠」をめぐる上田閑照と木村敏との議論をていねいにたどりながら,示される。第3章の後半からは,これまでの議論全体に対して,そもそも〈自分が自分を知る〉とはどういうことかという問題提起がなされ,これに対し西田哲学の「自覚」に関する思想を手がかりに一段冪を高めた思索が展開される。そして最終の第4章において,〈自分〉をめぐるこれまでの議論が,〈いのち〉ということに到ることが説かれ,読者は幽閉されていた小部屋に風のふきぬける扉が開かれることを感動とともに経験することになる。
この本は,「はじめに」に著者も書いているとおり,難解な書だ。しかし,この難解さは著者の書き方によるのではない。著者の筆致はいたってていねいで平易である。むしろ,この難解さは,思想そのものの深度に由来する。したがって,繰り返し読むことによって得られる認識は,読む苦労を忘れさせてくれるほどのものである。