冒頭のカザルスの名曲「鳥の歌」と、最後の村松崇継の「EARTH」(委嘱新作)が、地球の平和への思いを込めたメッセージ曲として、鋭い対照をなしている。「EARTH」は心にすんなり入り込んでくるメロディが心地よい佳作で、「この地球に生まれて」というメッセージを思わせる。アンコールピースにも似合うし、歌詞をつけて歌えそうな親しみやすいメロディが魅力的だ。
「鳥の歌」からドップラー「ハンガリー田園幻想曲」への静かな流れ、そしてバルトークの「ハンガリー農民組曲」、1曲おいてボルヌの「カルメン幻想曲」という配列はエキゾティックな“旅”の情緒を意識してのものだろう。「牧神の午後」も薫り高い演奏。音色もテンポも自在な動きを見せる西脇千花のピアノもなかなかの好演である。フルートという楽器を通して高木綾子が込めている思いが伝わってくるアルバムだ。(林田直樹)