インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

超大国アメリカの文化力―仏文化外交官による全米踏査レポート

価格: ¥4,410
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
アメリカ文化研究のバイブル ★★★★★
 本書はアメリカ文化を全米を踏査するフィールド・ワークに4年の年月をかけ、35州、110都市での700回のインタビュー調査や434点の未発表史料で裏打ちして書かれた、前代未聞のアメリカ文化史研究の最高峰ともいえる書物。原著刊行直後に米仏の主要なメディアであるニューヨークタイムズやヌーベル・オブセルバトゥールなどの書評でも大好評を博した怪物のような書物である。浩瀚で2段組、これだけでも読む気が失せそうな体躯の持主だが、原著の明晰さが邦訳にも好影響を与えており、読みやすい。
 著者の動機付けは、フランスを代表するアメリカ研究家アレクシス・ド・ドクヴィルの名言「アメリカで、私はアメリカを超えるものを見た、と言わねばなるまい。」(『アメリカのデモクラシー』)を、序論のエピグラフに引きながら、また日本語版序文に引きながら、百年ぶりに執筆されたこの大著の意図を説明する。
 アメリカ文化に関わる調査を繰り返しているものにとって、本書の包括的な調査と分析結果は、実に心強い内容である。アメリカには、欧州の各国が設置している文化省(日本ではご存知、文化庁)に相当する中央政府機関がないことで、アメリカ文化の偏在性と自立性を維持しているとか、アメリカには歴史がない、という浅薄な批評に対して、「この国のいたるところでおこなわれている歴史的建造物の指定と修復をよく観察するならば、それだけで彼らに対する手厳しい反論となる」(p.222)など、実に精緻な観察と分析である。これは評者も全く同感である。日本には確かに2千年程度の歴史があるが、近現代史の史料すらまともにない国に<歴史>があるとは言えない。こうした実体を精確に淡々と叙述することで、アメリカ文化システムの特異性を浮かび上がらせており、主観的な見解は極度に押さえており、本書の成功の要因である。読んでいて、実に楽しめる1冊である。特にその起源として、ケネディ政権とジャクリーヌ夫人、シレディンガー補佐官とアンドレ・マルロー・フランス文化相との関係性がここ50年のアメリカにおける文化政策の礎石になっている記述は出色である。シュレディンガーの文書は昨年ニューヨーク公共図書館に収められたのは、記憶に新しい。
 邦訳の唯一の欠点は、索引がないことである。この大著を隈なく読むには索引は必須である。