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わたしの渡世日記〈下〉 (文春文庫)

価格: ¥800
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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さっぱりした読み応えです。 ★★★★★
ハワイが好きなのでたまたま彼女の随筆をよみましたところ、非常に楽しく、今回この本を購入しました。
文章の巧みさと面白さ ★★★★★
後半は上巻の最後で特攻隊員を涙で送った著者が、日比谷の東宝劇場を急遽米軍用に改造した「アーニー・パイル劇場」のステージで、超満員の米兵を前にアメリカの流行歌を歌っているところから始まる。「人には言えない、妙なうしろめたさが、私の背後に忍び寄って」くるが、「人々は食料を奪いあって道義は地に堕ちた」とも書く。
戦後の東宝大争議に巻き込まれて当時の「赤いスタジオ」の様子を描き、また自殺直前の意外な太宰治の印象や、恐れ多くも昭和天皇・皇后両陛下に御植樹の介添え役で会われたエピソードを書いている。これらの描写が抜群にうまくて面白い。あまりにうまくて解説で沢木耕太郎氏がゴーストライターの存在の有無を書いているほどであるが、その疑いはその後多くのすぐれた著作を残していることで明らかである。仕事は猛烈に忙しかったが、母親との確執はますます先鋭化し、プロデューサーとの金銭トラブルや深みにはまった泥沼の男女問題も生じていた。これらを一掃したくてパリに逃避行するが帰国後も人気は衰えず、「二十四の瞳」などの代表作を残した。

尊敬する小津安二郎、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、木下恵介、成瀬巳喜男らとの交友は写真も載せて楽しい読み物になっている。沢木は「言いたいことを言いたいように書く。容易そうに見えてこれほど難しいことはない」と書き、それをいとも簡単にやってのける著者の才能をほめているが、自伝の場合は特にそうだ。著者は恥の上っ面だけ撫でたような気がして不満が残るというが、身内のことや金銭、男女問題などかなりきわどい話も赤裸々に書かれていて、飾りッ気のない著者のさっぱりした性格が反映されている。



読み終わって気持ちが暖かくなりました。 ★★★★★
世の中すごい女性がいるものだと思いました。独特のリズムの良さに上下一気に読んでしまいました。5歳からの女優業、小学校も満足に行っていないという著者の言葉ですが、世間が周囲の人々が立派な学校でした。人生を社会を深く見つめる著者の確かな瞳の力にすっかり魅せられてしまいました。すこし大げさですがこの本と出合えて本当に良かったと思います。多くの人々、政治家も評論家もマスコミ人にもそして市井の人々に是非読んで欲しい本です。沢木耕太郎の解説もいいです。
ポツダム宣言から。 ★★★★★
上巻は彼女の出生から昭和20年の戦争までが描かれ、
下巻はポツダム宣言から、50歳までが描かれています。
これ、文庫本としてはボリュームもたっぷりで、
上下で800頁近くもあるのですが、私はお風呂の中にまで
持ちこみ、数日で読んでしまいました。

川口松太郎が「人生の指導書」と絶賛した、と裏表紙に
ありましたが、全くその通り。

人生をかじり始めた私でも面白く、また勉強させられ、
それよりも何よりも彼女の潔さ、プロ意識、人間としての
品性などに圧倒させられました。

大正13(1924)年に生まれて、こんな自由なものの見方が
出来るんだ、こんな女優もいたんだ、と驚かされ
そして感動しました。

少しでも多くの人に読んでもらいたいです。

ひでぼんのオススメ ★★★★★
子役から歩みはじめた俳優の道。その途上には、日本映画界の黄金時代が横たわっていた。当時の彼女の生き様もさることながら、活動屋たちの様々なエピソードが興味津々で面白すぎるのだ。

絵のなかの散歩道 ★★★★★
数々の文化人との交流(谷崎潤一郎・新村出・志賀直哉・梅原龍三郎・川口松太郎など)の話を聞くと(読むと)、ほんとうに凄い女優だったんだなあと思う以上に、あの著明な文化人達が現役で生きて交流していたという事実があったんだ、だけど遠い昔の事なんだなあとしみじみ思ってしまいます。この「わたしの渡世日記」の最後を彩るのは、木下恵介監督の下で助監督だった、のちに夫となる松山善三氏の第一印象の記述は本書の中でも特にさわやかな印象を与えてくれる一場面です。またこの文庫本には、スチール写真やプロマイドなどが文章の合間に適度に掲載されていてとても楽しめます。・・・波乱と黄金の光に満ちた彼女の人生は、彼女の出演した映画作品に引けを取らない物語です。