標準理論の構築者ならではの視点
★★★★★
素粒子物理の標準理論の根幹のひとつである「小林ー益川理論」の2008年ノーベル賞受賞者、益川さん自身による、1995年の時点での、一般向けの素粒子物理の解説書です。標準理論が構築されていく背景や歴史が、当事者の立場から描かれており、そのあたりは特に、興味深く面白い内容となっています。
数式は極力省略されているので、一般の読者にとってはとても読みやすくなっています。大学の物理学科で標準的な科目(ニュートン力学から電磁気学、量子力学、相対性理論へとつづく理論)を学んでいる場合には、数式なしで述べられていることが確実にフォローできると思います。そうでない場合にも、(その場合、どのように読者に頭の中にイメージされるのか私には分からないのですが)そんな考え方があるんだということが、分かってもらえると思います。
ノーベル賞受賞に合わせてメディアにとりあげられたときの副読本として、読んで(あるいは、積ん読して)手元においておくと、現在の物理学者の描く物質観がより鮮明に分かり、新しい世界観への理解が深まるのではないでしょうか。