残念ながら、これが現実である。
★★★★☆
日本では、少子化が問題とされ、すでに人口減少社会に入りつつあり、重要な政策課題になっている。
一方で世界に目を転じると、人口爆発と都市への集中が激しさを増し、貧困層が激増し、スラムがいたるところに出現し、拡大している。
本書は、その世界各地に広がるスラムの現状をつぶさに明らかにする。
ただ、著者の視点はジェフリーサックスのような楽観主義には彩られていない。
著者が示すのは、いくつもの悲惨な事例だけである。
貧困撲滅のための国連の取り組みも皮肉たっぷりに書いているし、あのグラミン銀行の取り組みでさえ、搾取される貧困層にとってはほとんど役に立たないと断言する。
残念ながら、これが現実である。
なお、本書の前半に世界のメガシティの一つとして東京も出てくるが、他の都市には見られない際立った特徴がある。
すなわち、スラムがないことである。
この事実こそが、世界からスラムをなくすための一つのヒントになりそうな気がするし、日本が世界に貢献できることの一つであると確信した。