東北は日本仏教のフロンティア。
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早いもので、五木さんに導かれて辿る百寺巡礼は7巻目となりました。今回は、東北。宮城県仙台から青森県恐山に歩が進みます。五木さんの足跡を辿りながら、浮かんだのは、東北地方というのは仏教界のフロンティアと位置づけられるのではないか、という思いでした。奈良・京都で栄えた日本の仏教は、繁栄と堕落が繰り返され、仏教の教えの原点に戻るという理想を求める僧は東北にそれを求めたのではないか、と。お大師さんといえば弘法大師と思いがちですが、東北地方では慈覚大師円仁を指すのだそうです。このこと一つとっても関西の日本仏教とは趣の違いが感じられるでしょう。会津の勝常寺には、刀で顔を切られた像があります。優しい顔をした像ではなく、威圧するような眼光を恐れて、攻め入った伊達家の兵が刃を振るったのではないかと推察されています。かつての日本を知るうえで寺を訪れるのは興味深いことです。有名な中尊寺を訪れた五木さんは、かつて東北は独立した国だったのではないかと思いを馳せておられます。圧倒的な財力によって建てられた金色堂。ここは、奥州藤原氏の首都であり、平泉幕府が鎌倉幕府の前に置かれていたと想像してみると日本史は少し違って見えるのではないかと。日本という国の神秘に触れる旅が続きます。